M&A専門誌マール

2017年07月26日(水)

藤原裕之の金融・経済レポート

相続による預貯金流出に直面する地銀 ~ピンチをチャンスに変えるには

 藤原 裕之((一社)日本リサーチ総合研究所 主任研究員)

地銀のリテール事業の課題 ~預貯金流出リスク

 前回は地銀の収益低迷の原因をマイナス金利に求める風潮に対し、担保・保証に依存した危機対応型モデルからの脱却、すなわち顧客企業に寄り添った雨でも傘を差し続けるリレバン型モデルへの移行の遅れが問題の本質であり、その対応の違いが地銀間の収益力の二極化をもたらしている点についてみてきた。

 では地銀のもう一つの重要な柱、リテール(個人向け)事業についてはどのような見方ができるのだろうか。いま地銀のリテール事業で大きな関心事となっているのが相続発生に伴う預貯金流出である。相続資産の地域移動が今どのような状況にあり、地銀は今後どのように対応していくべきか。この問題を考えることで地銀のあるべきリテール事業の姿も見えてくるはずである。

2020年代から地方の年金流入は減少へ

 これまで地銀の預金は地域経済が低迷する中でも比較的安定した伸びを維持してきた。これは賃金伸び悩みによる勤労者世帯の預貯金が減少する一方、年金のコンスタントな流入による高齢世帯の預金増が下支えしてきたからである。

 問題は年金のコンスタントな流入が今後も継続するわけではないという点にある。年金流入で預金が増加を続けるには年金受給者の継続的な増加が前提となるが、これからの人口動態を踏まえると、年金が地銀の預金を支えるというシナリオを描くことはできない。

 日本の65歳以上人口は2040年を過ぎるとピークアウトする見込みだが、地方ではもっと早く高齢人口の減少が始まる。都道府県別の将来人口推計値をみると、2020年代で早くも25の道県で65歳以上人口が減少に転じる(図表1)。これら25の道県に拠点を持つ地銀は年金流入による預金増が早々に減少に向かうことを覚悟しなくてはならない。

図表1 都道府県別に見た65歳以上人口のピーク




預貯金流出リスクの主因 ~高齢人口の減少と相続資産の域外移転

 このように地方では間もなく年金流入による預金の下支え効果が期待できなくなる。そしてこれに追い打ちをかけるのが相続移転に伴う預貯金流出である。高齢人口の減少と相続資産の域外移転のダブルパンチが地銀を襲ってくる。さらに平成25年度の税制改正で相続税の課税強化と贈与税の非課税措置の拡大が図られており、遺言信託や教育資金の贈与など生前から資産を移転しようとする動きも強まっている。

 地銀が懸念する相続資産の流出は、地方圏に住む親(被相続人)が首都圏など他地域に住む子ども(相続人)に相続移転するようなケースで発生する。他地域に住む子どもが親のメインバンク(地銀)と取引がないと、親から相続した資産は子どものメインバンクの口座に移し替えられてしまう。特に被相続人が大口顧客であるような場合、大規模な預貯金流出が発生することになり、それだけで地銀の営業基盤を揺るがしかねない。

相続資産の規模は年間41兆円 ~域外移動は東京一極集中

 では今後どれだけの相続資産が発生し、そのうちどれだけの資産が自行から流出する可能性があるのだろうか。筆者がざっくり推計したところ、相続人が子どもである場合を想定した場合、年間に発生する相続資産額は約41兆円に達する。そのうち8割近く(31.7兆円)が同じ地域ブロック内の移動(例:岩手県から秋田県への移動)であり、残りの2割(9.2兆円)は地域ブロック間の移動(例:岩手県から東京都への移動)となる(図表2)。

 地域ブロック間の移動では、殆どの地域ブロックで相続資産がネットで流出超となる。ネットで流入超となる地域ブロックは、東京圏や大阪圏など都市圏だけである。中でもネットでの流入額の大きさは・・・


■藤原 裕之(ふじわら ひろゆき)
略歴:
弘前大学人文学部経済学科卒。国際投信委託株式会社(現 三菱UFJ国際投信株式会社)、ベリング・ポイント株式会社、PwCアドバイザリー株式会社を経て、2008年10月より一般社団法人 日本リサーチ総合研究所 主任研究員。専門は、リスクマネジメント、企業金融、消費分析、等。日本リアルオプション学会所属。

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事業承継・地方 , 業界動向 , 藤原裕之

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