M&A専門誌マール

2017年04月26日(水)

藤原裕之の金融・経済レポート

三越伊勢丹はどこへ向かうのか ~米百貨店から学ぶ近未来の百貨店

 藤原 裕之((一社)日本リサーチ総合研究所 主任研究員)

三越伊勢丹の社長辞任劇

 百貨店最大手の三越伊勢丹ホールディングス(HD)の大西洋氏が突然の社長辞任に追い込まれたのは2017年3月の話である。セブン&アイHDの鈴木氏の退任に続く「お家騒動」などと揶揄する向きもある。

 辞任劇の真相は筆者には知る由もないが、他社と比較しても同社の業績の悪化ぶりが目立っていたのは事実である。高島屋の2017年2月期の営業利益は3.1%増、大丸松坂屋のJ.フロントリテイリングは7.2%減にとどまるのに対し、 三越伊勢丹HDはインバウンドの反動減という要素があるにせよ27.5%減(見込み)と大幅減益となった(図表1)。

 周知のとおり、バブル崩壊を機にユニクロを筆頭とするファストファッション、家電ではヤマダ電機など大型家電販店など、特定分野の商品を豊富に品揃えし低価格で販売するカテゴリキラーが出現する一方、高付加価値を売りにするラグジュアリーブランドは百貨店を離れ、銀座や青山に豪華なブティックを構えた。

 その後もECの台頭といった逆風が吹く中、百貨店は有効な対策を打つことができず今日まで至った結果が地方郊外店の相次ぐ閉鎖である。同社は今年3月に三越千葉店と三越多摩センター店を相次いで閉鎖し、頼みの綱だった旗艦店の伊勢丹新宿本店でさえインバウンド需要の反動減をカバーできない状況に陥っている。

図表1 百貨店3社の営業利益(前年同期比)の推移



大西改革は間違いだったか ~多角化は問題の本質でない

 ここで大西氏が行った経営改革を整理してみよう。大西氏は2012年~2013年に行った新宿本店の大改装において、年齢別のフロアからライフスタイルに合わせたフロア構成の変更、自主編集売り場を拡大し、婦人のシューズ売り場を1.5倍に広げるなどの売り場改革を実施した。大西氏は同時に百貨店のみの一本足打法の限界を指摘し、ブライダル事業のプラン・ドゥ・シーと共同出資会社を設立(15/10)、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)と共同出資会社を設立(16/4)、ニッコウトラベルの買収(17/2)など、矢継ぎ早に多角化戦略を打ち出し、脱百貨店依存を進めてきた。こうした大西改革に対し、現場からは業務負担が増えるなどの反発があったようである。年齢別からライフスタイルを軸とした売り場の変更などは、「どこに何があるのかわかりにくい」「前のほうがよかった」という顧客の声も多かったようである。

 では大西改革は方向性を誤っていたのだろうか?筆者は従来の百貨店事業から脱却すべく、フロアのテイスト軸を明確にしてライフスタイル別の価値空間の提供を目指す戦略自体に問題はなかったと考えている。「ファッションの伊勢丹」と言われた同社であっても事業の多角化は不可欠な課題であったはずであり、Jフロントなどは低価格を売りとする衣料品や家電量販店のテナント誘致を積極的に行っていることを鑑みても、多角化が問題の本質でないことは明らかである。

いち早く構造改革を進めてきた米国の百貨店

 とはいえ、大西改革がベストかと言えば決してそうではないことも事実であろう。百貨店業界の不振は日本に限った現象ではなく、米国の百貨店もECに圧されて大量閉店を強いられてきた。しかしそれに対する危機感と対応策は日本の百貨店業界とはだいぶ異なる。

 米国の高級百貨店「ニーマン・マーカス」は、EC比率を高めるとともに、テイスト軸に基づいて国内外のブランドを買い付け、洗練されたフロア空間と接客サービスを顧客に提供し、それと同時にオムニチャネル化も着実に進めてきた。日本の百貨店のEC化率は1%程度と想定されるのに対し、ニーマン・マーカスのEC化率は約3割、ノードストロームも約2割とECシフトを急速に進めている。同店のモバイルアプリでは、店頭や雑誌などで欲しい商品を撮影すればEC内から同じテイストの商品をピックアップしてくれるような機能も付いている(図表2)。もっとも米国ではブランド専門店もECを急速に拡大させており…

 


■藤原 裕之(ふじわら ひろゆき)
略歴:
弘前大学人文学部経済学科卒。国際投信委託株式会社(現 三菱UFJ国際投信株式会社)、ベリング・ポイント株式会社、PwCアドバイザリー株式会社を経て、2008年10月より一般社団法人 日本リサーチ総合研究所 主任研究員。専門は、リスクマネジメント、企業金融、消費分析、等。日本リアルオプション学会所属。

※詳しい経歴・実績はこちら

 

 

 

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業界動向 , 企業研究 , 藤原裕之

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