M&A専門誌マール

2015年4月号 246号 : 対談・座談会

[座談会] 企業の成長戦略とCVC活用の実際 有料記事です

 秋元 信行(NTTドコモ・ベンチャーズ 副社長)
 尾崎 一法(アント・キャピタル・パートナーズ 代表取締役会長、日本ベンチャーキャピタル協会 会長)
 木下 万暁(ホワイト&ケース法律事務所 弁護士)
 渡辺 洋行(B Dash Ventures 代表取締役社長)
 司会 編集委員 池田 耕造  (50音順)

左から秋元 信行氏、 尾崎 一法氏、 渡辺 洋行氏、 木下 万暁氏

<目次>

ベンチャー・キャピタルの4つのカテゴリー

-- 事業会社が「コーポレート・ベンチャー・キャピタル(CVC)」と呼ばれる投資ファンドをつくってベンチャー企業に投資する動きが広がってきました。その背景には、加速する技術革新や市場ニーズの多様化に対応して、大企業がイノベーション創出の停滞を打破するために、従来の自前主義から脱してベンチャー企業の、外部資源を取り入れて事業活動を活性化させようという狙いがあるといわれます。かつての日本経済の高い成長力の原動力となった日本企業の“破壊的なイノベーション”が失われたことが日本経済停滞の原因であるとの指摘もある中で、アベノミクスの第3の矢である成長戦略でも、「日本再興戦略改訂版」(2014年6月発表)で、大企業も巻き込んだベンチャー支援を促進することが掲げられています。そこで、今回はCVC業界に詳しい皆様にお集まりいただいて、企業の成長戦略とCVC活用の実際についてお話し合いいただくことにしました。まず、日本ベンチャーキャピタル協会(JVCA)の尾崎会長から日本のベンチャー・キャピタル(VC)業界の概観と最近のCVCの動きについてお話しいただきたいと思います。

尾崎 「JVCAは2002年11月に発足しまして、以来、ベンチャー企業の創出促進、リスクマネーの供給体制の強化、法規制のあり方等に関するさまざまな提案や関係官庁への働きかけを行っています。CVCについても、14年11月18日に、3回目を迎える『CVCフォーラム2014』を東京・アークヒルズにあるNTTドコモ・ベンチャーズのイベントスペースで開催しました。今回は基調講演やパネル・ディスカッションが中心だった前回までと趣向を変えて、『CVCs on Stage!』と題して13社もの錚々たる事業会社の皆様にご登壇頂き、各社の取り組みや考え方、経験談を聞かせていただきました。また、VCトップによるパネル・ディスカッションのコーナーも設けて、VC側から見た事業会社との連携や役割分担について、活発なディスカッションが行われました。

  このCVCについて詳しく触れる前に、まず日本におけるVCの発展段階を概観しておきたいと思います。日本でVCは、1972年に京都経済同友会が『京都エンタープライズディベロップメント』を創設したのが始まりです。第1次ベンチャーブームの先駆けとも言われましたが、同社は79年に解散しています。

  VCのプレーヤーという視点で見ますと、大きく4つぐらいのカテゴリーに分かれると思います。その中で現在コアになって活躍されているのは独立系で、20社前後の有力プレーヤーがおられます。そのうちの半数近くは既に2号目、3号目のファンドの組成に入っていたり、既に組成を完了しているという段階にきています。米国のVCを見ましても、4号ファンドぐらいになりますと経験豊富なプロフェッショナル領域のファンドと言われますが、その意味では日本の独立系VCもその段階に入りかけていると言っていいと思います。ファンドのパフォーマンスもすばらしく、1980年代、90年代の日本のVCがパフォーマンスに苦しんだ時代を知っている人間にとっては隔世の感がありますし、今後も独立系が活躍していくと思います。

  2つ目は大学発のVCで、80~90年代にかけて産学連携ファンドがたくさん出てきましたが、当初は上手くいきませんでした。その背景のひとつに、大学の先生は役員になれないとか、『大学の先生が金儲けするなんて』というアカデミア関係者における社会的な受け止め方があったのだと思います。しかし、最近では有力な産学連携のファンドができつつありますし、そこに在籍するベンチャー・キャピタリストの質も上がってきています。例えば、東京大学エッジキャピタル(UTEC)の郷治(友孝)氏のように、旧通商産業省(現経済産業省)在職中にVCを含むプライベートエクイティファンドの根拠法となった『投資事業有限責任組合契約に関する法律(投資事業有限責任組合法、ファンド法)』の起草に関与し、自らベンチャー・キャピタリストを志して04年に退官、UTECの設立に参画し、06年代表取締役社長・マネージングパートナーになるという人材も出てきています。今後、産学連携の大学発VCは米国のように発展の道を辿っていくのではないかと思います。

  3つ目が、地域VCです。これはまだ地方銀行による運営が中心ですが、これからは地方における独立系のVCが地域経済のエコシステムの中で重要な役割を果たすようになると思います。

  そして、もう1つが今日のテーマであるCVCです。CVCにしても当初は、スタッフが100%親会社からの出向組で、VC投資については素人という人達が親会社の人事異動でCVCを始めるという状況でした。したがって、CVCといってもキャピタリストのレベルは決して高くはなかったのです」

大企業の経営戦略転換とCVC

尾崎 「こうした中で、グローバルでは、面白い動きが99年のITバブルの崩壊の後の米国で見られました。ITバブルの時代に、米国ではコンサルティングファームなどによってインキュベーションを目指したCVCが多数作られました。しかし、その多くはITバブル崩壊とともにほどなく消えて行きました。このITバブルの時にVCの業界に出て来たCPA(米国公認会計士)やコンサルが、バブル崩壊によって“B to C”(“Back to Consulting”)ということで、再びコンサルに戻るという動きがある一方で、コンサルには戻らず新たなCVCの立ち上げに参画するという人々も出てきたのです。また、大手企業からスピンアウトしたりしてCVCにチャレンジする人たちもたくさん生まれました。08年のリーマンショックによって産業界の既存勢力の序列がなくなったことを受けて、その後、様々なベンチャービジネスが立ち上がってきますが、その素地を作ったのがこうした人達が立ち上げたCVCです。

  日本でも実はリーマンショック以前と以後では全く状況が一変したようです。CVCを作る大企業の経営戦略に大きな変換が起きています。例えば、海外M&Aにしても、リーマンショック以前のM&Aというのは多角化、規模の拡大が目的でしたが、今のM&Aは新たな経営資源の取り込みが大きな狙いの1つとなっています。アクハイヤー(Acqui-hire:買収する<acquire>と雇用する<hire>を掛け合わせた造語)という言葉があるように、買収先の優良な企業に社員を送り込むのではなく、逆に買った会社の経営陣に任せる。さらに、その中で優秀な人材がいれば日本本社の役員にして本社の社風を変えてもいいというぐらい考えている企業も出てくるようになったのです。

  実際、この間の『CVCフォーラム』でも戦略的M&Aを行う狙いについて発表された企業もありました。それはなぜかというと、単純に今までの事業補完的な買収、出資ではなく、違う事業分野に乗り出すことを狙ったM&Aの場合、当然自社には経営リソース、知見がないわけです。経験のない分野の企業を敢えて買収や出資という手段によって取り込んで自社の経営戦略に活かそうという時に、自社の社員を送り込むことによって、活力のない子会社にしてしまったのでは元も子もないということがわかってきたということです。ですから、大企業のCVCがベンチャー企業に投資するにしても、『御社は当社の事業パートナーです』とか、起業家には『当社の本部長をやって下さい』というくらい、ベンチャービジネスや起業家の地位が高くなっていると思います。大企業の方が本気でベンチャー企業を事業パートナーにするようになったということが言えると思います。また一方で、起業家の側も、すでに企業を1社あるいは2社設立して売却していたり、場合によっては撤退していたとしても、そこから貴重な経験を積んでいるベテランの経営者も出てきていまして、ベンチャー企業の経営レベルも上がってきているということもあると思います。

  JVCAが主催した14年10月のメディアプレゼンテーションで、インキュベイトファンドの代表パートナーの村田祐介氏が、日本のベンチャー投資の現状と動向を解説してくれたのですが、昨年、累計10億円以上の資金調達を実施した会社が24社、累計調達額3億円以上の会社が50社にのぼっています。シリコンバレーのベンチャー企業で、未上場段階で1000億円を超える時価総額になるメガベンチャーという会社は150社以上、1社だけで2000~3000億円を調達する会社があるのに比べればまだ規模は小さいと言えますが、日本もようやく、シリコンバレーの“平均”レベルになったということです。このように、CVCも含めて、日本のVC業界全体が大きく変わってきているということが言えると思いますね」

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