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2017年2月特大号 268号 : アンケートでM&Aのプロに聞く

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アンケートでM&Aのプロに聞く 2016年の総括と2017年の動向予想 有料記事です

  2016年の日本企業のM&Aは2652件と、前年の2428件を9.2%上回り、2012年以来5年連続の増加となった。IN-IN1816件、IN-OUT635件、OUT-IN201件と、OUT-INを除き前年を上回った。金額は16兆6133億円と、前年の16兆1881億円に続き、高水準を維持した。IN-OUTでは欧米企業への大型買収が相次ぎ、中でもソフトバンクグループによる英アーム・ホールディングスの買収(3兆3000億円)は注目を浴びた。国内(IN-IN、OUT-IN)では、企業再生や事業構造の転換などに伴う業界再編が進み、ベンチャー投資や中小企業の事業承継案件も活発化した(詳細は「M&A回顧」をご参照ください)。2016年に日本企業のM&Aを動かした要因は何か、2017年の展望は?M&Aのプロを対象に2016年の総括、2017年の動向予想についてアンケート調査を実施した。

回答者37人(敬称略、五十音順)
朝倉 陽保(丸の内キャピタル 代表取締役社長)、芦澤 美智子(横浜市立大学 国際総合科学部 准教授)、安東 泰志(ニューホライズンキャピタル 会長 兼 社長)、植田 兼司(いわかぜキャピタル 代表取締役社長)、荻野 敦史(TMI総合法律事務所 パートナー)、神山 友佑(デロイトトーマツコンサルティング合同会社 執行役員 パートナー)、木下 万暁(サウスゲイト法律事務所・外国法共同事業 パートナー)、櫻井 歩身(雄渾キャピタル・パートナーズ 代表パートナー)、佐々木 康二(東京海上キャピタル 取締役社長)、澤田 英之(レコフ 部長)、鈴木 栄(KKRキャップストーン・ジャパン マネージング・ディレクター)、住吉 敬(三井住友信託銀行 企業情報部 課長)、十亀 洋三(M&Aキャピタルパートナーズ 取締役)、髙原 達広(TMI総合法律事務所 パートナー)、竹田 年朗(マーサージャパン グローバルM&Aコンサルティング パートナー)、竹埜 正文(クリフィックスFAS マネージング・ディレクター)、谷口 友保(M&Aコーポレート・アドバイザリー 代表取締役)、堤 智章(キーストーン・パートナース 代表取締役)、豊岡 芳人(リサ・パートナーズ 企業戦略部 部長)、中野 宏信(シティック・キャピタル・パートナーズ・ジャパン・リミテッド 日本代表)、成田 宏紀(DCIパートナーズ 代表取締役社長)、仁科 秀隆(中村・角田・松本法律事務所 パートナー)、野崎 大輔(マッキンゼー・アンド・カンパニー パートナー)、橋本 豪(西村あさひ法律事務所 外国法パートナー)、平井 宏治(カチタス 代表取締役)、平野 温郎(東京大学 大学院法学政治学研究科 ビジネスロー・比較法政研究センター 教授)、福﨑 昇平(丸の内キャピタル シニア・ディレクター)、藤井 徹也(リンカーン・インターナショナル 社長)、藤田 浩己(企業活性パートナーズ 部長)、藤本 欣伸(西村あさひ法律事務所 弁護士 パートナー)、松本 守祥(WMパートナーズ 代表パートナー)、丸山 宏(横浜市立大学大学院 国際マネジメント研究科 教授)、光定 洋介(あすかアセットマネジメント チーフファンドマネジャー)、光澤 利幸(フロンティア・マネジメント 常務執行役員)、安田 洋史(青山学院大学 経営学部 教授)、山内 利夫(PwCアドバイザリー合同会社 ストラテジスト)、山本 貴之(日本政策投資銀行 執行役員企業戦略部長)

アンケートの概要
  本誌は、「M&Aの現場から」「マールレポート」などにご登場いただいた方々、「レコフM&Aデータベース」をご利用いただいている方々のうち、M&Aの実務者、研究者を対象に、2016年の総括、2017年の動向予想など、M&Aに関するアンケート調査を実施した。2011年から開始し、今回が5回目となる。期間は2016年11月25日~12月9日、175社・283人を対象とし、37人から回答を得た。回答率は13.1%。回答者の皆様、ご協力、誠にありがとうございました。
  なお、本アンケートは、対象者をそのほかのM&Aのプロや有識者などに広げたうえで2017年1月に追加で実施し、その全容を同年2月発行予定の「MARR2017(M&Aレポート2017)」に掲載する予定です。

マール編集部

【問1】 2016年、M&Aを動かしたトピックスは何ですか?(複数回答可)
2016年、M&Aを動かしたトピックス

「国内市場の縮小、成長鈍化」が37人中27人で72.9%と、前年に引き続き圧倒的に多かった。次いで「グローバル競争の激化」が23人で6割を占めた。さらに、「中小企業の後継者問題」15人、「技術革新(IoT、AIなど)」14人、「国内の人口動態(少子・高齢化の進展など)」10人、「企業の好業績」、「新産業育成(ベンチャー投資)」各8人と続いた。前年10人だった「アベノミクス」は2人に減少した。

  また、「その他」として「量的緩和に伴う流動性向上」、「マイナス金利による貸出圧力」、「社外取締役の増加」が挙げられた

【問2】 2016年、M&Aを停滞させたトピックスは何ですか?(複数回答可)
2016年、M&Aを停滞させたトピックス

  「経済・金融・財政政策に起因する経済見通しの不透明さ」が24人と前年の7人から急増し、全体の64.8%を占めた。次いで「世界経済状況」、「中国の経済成長減速」各12人、「新興国の経済リスク」9人と続いた。また、前年19人だった「中国の経済成長減速」は12人に、14人だった「新興国の政治リスク」は9人に減少した

  また、「その他」として「Brexit、米国大統領選挙(投票の結果やそれを受けた今後の方向性が必ずしも明確でなかったためM&Aに躊躇したクライアント企業も多かった)」が挙げられた一方で、「停滞していない」という意見が2人から挙げられた

【問3】 2016年、印象に残った案件は何ですか?

  案件規模から、ソフトバンクグループによる英アーム・ホールディングスの買収案件を挙げる回答者が圧倒的に多かった。また、三菱自動車工業、シャープ、東芝の企業再生に絡む案件に注目が集まった。

(主な案件とコメント)

▼ソフトバンクグループ-アーム・ホールディングス(英) 買収 (IN-OUT)

→ 巨額買収、Brexit直後の難しいタイミングでの決断、既存事業から飛躍した戦略的買収など様々な面で特筆すべき案件
→ 時代の変化に合わせて事業展開を加速化するソフトバンクのM&A戦略を象徴する案件でもあり、日本企業の海外M&A展開について、考えさせられる事案であったと思われる
→ 超大型案件。孫正義氏の後継者問題の直後の案件ということもあり、注目を集めた
→ アービットラージの達人、孫正義氏による大博打。事業シナジーがない以上、出口を確保した上での企業買収と考えられる。恐らく、当初の出口は中国政府の意を受けた中国企業だと思われたが、アメリカ大統領選挙でトランプ氏が当選し、安全保障に関わる企業買収にストップをかけ始めたのを見て、2016年12月に面談、米国企業への出口も模索しているのではないか
→ 金額もさることながら、次の一手がIoT関連の頭脳を握る半導体企画会社とは驚いた
→ 判断の当否については意見があるものと思うものの、果断に拍手
→ 金額面のインパクトもさることながら、合意に至るまでのトップレベルでの対話や買収後のアーム社の活用方針など、ディールストーリー面でも興味深い
→ 従来の日本企業にないバランスシート・借入を活用した大型買収をひるむことなく継続、迅速な決断力
→ 買収金額を考えれば、ソフトバンクの体力を超えている=投資回収を考えないディール

▼日産自動車-三菱自動車工業 資本参加 (IN-IN)

→ 即断即決で、価値を落とさず買収実現できた
→ 三菱自動車工業の不祥事の発覚に際して日産自動車が即座に対応したという点で、非常にスピード感があるディールとして印象に残った
→ 再編が避けられない状況の中で、財閥系と言えども、その波から逃れることは難しいということが示された一つのケースと言える
→ イベントドリブンとは言え、OEM再編、系列サプライヤー再編のトリガーになった案件と言える
→ 三菱自動車工業による不正のインパクトが完全に把握できていない中で、業界再編や同社の得意とするマーケット(タイ)などでの優位性を確保するために、迅速な調査と意思決定をされた点
→ ぶれることのない業界再編への意欲、自らCEOとなり牽引するリーダーシップ
→ 三菱自動車工業のリスクテイクを短時間で決意したこと
→ 業界再編に一石を投じたため

▼鴻海(ホンハイ)精密工業グループ(台湾)-シャープ 買収 (OUT-IN)

→ 本件についてはINCJ含めた様々な裏側を拝見してきたが、経産省には日の丸連合としてどこまで抜本的に再生をさせるつもりだったかが不確かだったと思う。ジャパンディスプレイの時のようなリーダーシップも感じられなかった。一方で鴻海については様々な意見があったが、数千億円単位で日本に投資をするという事実にもっと着目すべきではないかと思う
→ 日本の産業構造の変化を如実に示した案件であったこと。これを産業再編の梃子として使えるかどうかが課題か?
→ 経営陣の保身が企業の発展成長よりも最優先された企業売却
→ 技術分野は国内再編による強化に限界があり、国境を越えた再編が必至である。日の丸型の再編に拘らず、アジア企業との大胆な提携に踏み込んだ案件
→ 長期にわたって世界をリードしてきたと考えられてきた日本の電機産業の業界再編に台湾企業が参画したという意味で象徴的な案件
→ 注目度が高く、株主、会社、債権者のそれぞれの思惑が絡み合い、M&Aには色々なステークホルダーが存在することを世に知らしめることになった案件だと思う

▼キヤノン-東芝メディカルシステムズ 買収 (IN-IN)

→ 買収価格、手続きの合理性を検証すべき案件。キヤノンの時価総額増大に資する案件となるか
→ 富士フイルムとの買収合戦、純資産の20%近い巨額ののれん代を計上したケースとして注目
→ 医薬品、医療機器の分野では今後もM&Aが活発に行われると思われるが、その中でも大規模なM&A。また、独占禁止法上の問題、東芝の会計問題など、様々な問題が絡んだM&Aであった
→ 成長領域を模索していたキヤノンが、経営不祥事を起こした東芝から虎の子の医療機器事業会社を買収した案件。通常ならば売りに出ない企業を上手くグループ内に取り込むことに成功した
→ 東芝の有望事業にもかかわらず、不正会計の影響を受けて手放さなければならなかったこと

▼AG2号投資事業有限責任組合(アスパラントグループ<AG>運営ファンド)-さが美 買収(IN-IN)

→ 2015年6月1日に東京証券取引所から開示されたコーポレートガバナンス・コードを遵守した対応が求められる中で、条件の良い別の提案を検討しなかったという点で取締役の善管注意義務違反が問われる案件であり、日本産業の国際化に向けた課題解決に一石を投じた案件
→ ニューホライズンキャピタルによる対抗提案があり、M&Aを行うに際しての取締役の善管注意義務の問題について一石を投じた

▼コールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)(米)-カルソニックカンセイ 買収 (OUT-IN)

→ 企業価値向上に着眼、かつ案件規模が大きい
→ スポンサーM&A国内最大

▼SGホールディングス-日立物流 資本参加 (IN-IN)

→ 両社のカルチャーギャップを埋め合わせ、どんな成果を出していくのか注目している
→ 物流業界再編の号砲を鳴らす案件

▼ルネサスエレクトロニクス-インターシル(米) (IN-OUT)

→ リストラが一段落して、攻めの姿勢に転じるきっかけとなる買収であること
→ ようやく攻勢に転じたことの証し

(その他)

▼出光興産-昭和シェル石油 合併 (IN-IN)

→ 金融商品取引法を巡る解釈論など、法律の間隙を縫うような主張・反論のやり取りが、M&Aにおけるストラクチャリング、準備の重要性を認識させる機会となったように思われる
→ 創業家との問題、独占禁止法の手続きとの関係でも、引き続き注目される案件。海外の投資家からの問い合わせも当事務所に多数寄せられた

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M&Aマーケット動向 , 業界動向 , グローバル化 , M&Aプレイヤー

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