M&A専門誌マール

2017年12月号 278号 : 業界動向「M&Aでみる日本の産業新地図」

第153回 EV化で大転換期を迎える自動車業界~日本各社の生き残り戦略を探る 有料記事です

 編集部

排ガス抑制を目的としたグローバルなEV政策

  自動車業界が大転換期を迎えようとしている。

  家庭用掃除機などでイノベーションをもたらした英ダイソンは、固体電池を採用したEVを2020年までに開発することを目指すと発表した。開発プロジェクトに20億ポンド(約3020億円)が投資され、400人がプロジェクトにかかわっているという。これまで、自動車といえば内燃機関切り離せないものと考えられてきたが、ここへきて電気自動車(EV)がにわかに注目されるようになり、家電メーカーがEVを作るということも夢物語ではなくなってきているからだ。

  EVが注目されるようになった背景には、排ガスの抑制を目的としたグローバルなガソリン車、ディーゼル車の販売規制の動きがある。フランス政府は2040年からガソリン車、ディーゼル車の販売を禁止、電気自動車(EV)への買い替えを促進するための税制を導入する見通し。英国も同様に40年までにそれらの販売を全面的に禁止。オランダやノルウェーでも25年以降、販売の禁止が検討されているほか、ドイツでは議会が、30年までに内燃エンジンを搭載した新車の販売禁止を求める決議を可決した。この規制は欧州だけではない。インド政府は、30年までに市販する自動車をEVに限定する政策を打ち出しているし、世界最大の自動車市場である中国でもEVやプラグインハイブリッド車(PHV)、燃料電池車(FCV)などの新エネルギー車の販売を義務付ける政策が18年にも導入される。

  「各国のEV普及に向けた法規・税制面の措置が自動車業界に大きな影響を与えています。例えば、米カリフォルニア州で1000万円以上するテスラの“モデルS”が高価格にもかかわらず売れているのも同州のZero Emission Vehicle規制による優遇税制が重要な追い風になっているからです。EVの弱点とされるコスト・性能が段階的に改善されていく一方で、各地域の規制・税制がEVの本格普及の起爆剤になるという構図です。今後の普及スピードは地域差があるものの、先進地域では25年頃から本格的な普及が期待されています」と、A.T. カーニーの阿部暢仁 マッスィミリアーノ マネージャーはEV市場の拡大を予測する。

  ちなみに、16年の世界の自動車販売は9369万台、その中でEVは約47万台である。シェアで見るとまだ0.5%にすぎない。35年には600万台を超えるという予測もあるが、それでも6%強。日本の自動車メーカーの1年間の販売合計が約3000万台だから、EV全盛時代はまだまだ先との見方もできる。

  しかし、15年にディーゼル車の排ガス不正事件を起こしたフォルクスワーゲン(VW)は、不正発覚後EV重視に方針転換。25年までにグループで30車種以上のEVを投入する計画を打ち出している。また、ダイムラーも22年までにEVを10車種販売する計画を発表、中国の浙江吉利控股集団傘下に入ったスウェーデンのボルボ・カー・コーポレーションも内燃機関のみの車両生産を19年までに終了し、それ以降発売するすべての商品をEVやPHVなどにすると宣言するなど、欧州自動車メーカーはこぞってEVの普及に動き出している。

自動車メーカーを突き動かす中国市場

  「とりわけ注目されるのは世界最大規模の中国の自動車市場です。中国の自動車メーカーに対する政府の政策はこれまで先進国に追随する形でやってきたと言ってもいいのですが、EVについてはその動きが変わってきていて、EVに関する政策はほぼ先進国と同じタイミングで出るようになってきています。つまり、内燃機関を使った自動車からEVへの転換が急速に進むと予想されるわけで、この巨大な中国市場をどのように攻めるかが、日本を含めた海外自動車メーカーにとって非常に重要なポイントになってきます」と、A.T. カーニーの鈴木徹マネージャーは言う。

   中国の16年の自動車販売台数は約2800万台。日本市場の約500万台、米国の1755万台をはるかに上回るまでになっている。

  中国政府は17年9月、「NEV(新エネルギー車)法」を発表し、19年に中国国内で販売する販売台数の10%以上を新エネルギー車にすることを自動車メーカーに義務付ける方針を打ち出した。新エネルギー車とは、BEV(バッテリー式電気自動車)、コンセントから差込プラグを使って直接バッテリーに充電できるハイブリッド車であるPHV(プラグインハイブリッドカー)、FCV(水素で走る燃料電池車)などを指す。石油系燃料で走るHV(ハイブリッドカー)はこれに含まれない。中国政府は、30年にこれら新エネ車の年間新車販売を最低1500万台、全販売台数の40~ 50%を占めるというロードマップも発表している。

  「さらに、外国メーカーが中国で自動車を生産するためには、これまでは中国国内のメーカーと合弁企業を設立することが義務づけられ、外国からの出資比率は50%以下にするという決まりがありました。ところが、中国政府が17年4月に外資系自動車メーカーが同国で製造合弁する際の出資規制を緩和する方針を表明し、25年を目標に50%と定めた出資上限を引き上げる方針を明らかにしたのです。7月に施行された規制ではその採用が見送られたものの、緩和の大きな方向性は変わらないと思います。実際に50%以上を外資系が持てるようになれば直接投資による市場戦略を強化するメーカーが増えてくることも考えられ、ますます競争が激化する可能性があります」と鈴木氏は指摘する。

  現在、ゼネラルモーターズ(GM)やVWは上海汽車集団や第一汽車集団と合弁会社を作っているほか、トヨタは第一汽車、日産は東風汽車とそれぞれ合弁企業を設立しているが、出資規制の緩和とNEV法を睨みながら日系を含む外資系メーカー各社は世界最大の中国市場における戦略変更を迫られる状況になっている。すでに、今後も拡大が確実な中国のEV市場に対しては、VWが25年に中国で150万台のEVを販売する目標を掲げているほか、日本車大手で唯一、中国でEVを販売している日産自動車は主力EVである「リーフ」の中国市場投入を検討、グループ企業のルノーや中国の東風汽車集団と車台(プラットホーム)などを共通化することでコストを抑え、小型EVを19年から現地生産する計画だ。また、本田技研工業(ホンダ)は、中国で18年に発売予定のEVを合弁会社である東風本田汽車、広汽本田汽車の2社と共同開発すると発表している。

  こうした各社に出遅れた感があるトヨタ自動車は、FCVを次世代エコカーの柱と位置付けて、中国でも10月に実証実験を始める計画だったが、中国のEVシフトが予想より早く進んできたことから、PHVを現地生産し18年から発売するほか、SUV(スポーツ用多目的車)型EVを19年にも中国で量産する方向で検討に入った。

日本の自動車各社の戦略

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