M&A専門誌マール

2017年03月01日(水)

Webインタビュー

【第79回】テクノロジー分野のM&Aを成功に導く取り組みとは

 ジム・ラインハート(米国アーンストアンドヤング テクノロジー投資 マネージング ディレクター)
 カーステン・リッシュ(ドイツ アーンストアンドヤング トランザクション・アドバイザリー・サービス M&Aアドバイザリー パートナー)
 岩本 昌悟(EYトランザクション・アドバイザリー・サービス コーポレートファイナンス・ストラテジー マネージングディレクター)
 島田 英海(同、国際事業開発ディレクター)


テクノロジーの今後の動向と新しいビジネスの領域

―― 日本の成長分野として、IoT(Internet of Things:モノのインターネット)、AI(Artificial Intelligence:人工知能)への投資が注目されています。テクノロジーの今後の動向と新しいビジネスの領域としてはどのようなものがありますか。

岩本 「IoTについて言いますと、これまでは通信料金が高いということからなかなか普及が難しかったのですが、通信料と合わせて、組み込む通信チップ側の価格も安くなりサービスを提供する事が現実的となりました。また、手に持てるディバイスとしてのスマートフォンなども急速に普及するようになりました。そうした中で、例えば産業機械に低価格で通信モジュールを入れることが可能になって、機械側から稼働状況等のデータを通信チップとネットワーク経由で収集する事が可能になり、例えば、その収集したデータをサーバー側で分析、解析する事で、機械の稼働状態、部品交換のタイミングなどもその分析を通じてサービスとして提供する事が可能になったということが大きな流れとしてあります」

ラインハート 「IoTは多くの意味を含みます。以前は、ITテクノロジーはいろいろな業界の運用を支えてきましたが、業界そのものに大きな影響を与えることはありませんでした。現在IoTに関連するアプリケーションは業界そのものを大きく変換するような影響力があります。

 例えば、今、岩本が申し上げたように、スマートフォンの登場によって、個人のレベルまでIoTを活用する機会が広がっています。つまり、既存のビジネスモデルは大きく変わっているのです。企業はそれをうまく取り込まなくてはいけません。

 自動車業界のIoTは最も影響が大きいと思われる業界です。コネクテッドカー、自動運転、タクシー配車アプリケーションなどの多くのサービスが提供されており、その需要も大きくなって来ています。日本企業は完成車、部品、販売、オーディオ、IT、サービスと産業の裾野が広く、最も影響を受け、また与える事が出来ると思います。IoTは、私たちのビジネスにおけるデータやオペレーションの在り方を変革し、ビジネスモデルそのものを大きく変える力を持っています。例えば、車を持たないタクシー会社や、土地や建物を所有しない世界規模のホテルチェーン、電話線を引かない電話会社などがその例です」

IoT、AIの活用で、ビジネスの競争環境はどう変化するか

―― IoT、AIを活用することで、ビジネスの競争環境はどのように変化していくでしょうか、また、追求すべきビジネス機会はどのようなものでしょうか。

ジム 「ビジネスモデルが根本的に変わっていくでしょう。今あげた自動車を所有しないタクシー会社などは、タクシー業界に影響を与えただけではなく、自動車産業そのものの在り方を変えていくでしょう。ある会社では、ディーラーを通さずに直接個人の消費者に好みの自動車を売るようなサービスも行っています。

 今後、自動運転車が普及すると自動車の所有率は現在の五分の一程度になるのではないかという予測もあります。個人が所有するという考え方から、他人とシェアしたり、必要な時だけ使用するオンディマンドという考え方が一般的になるでしょう。アメリカや日本などでは、自動車の個人所有率に関してはすでにピークを迎えている可能性もあります。今後必要な交通手段として、車の数は減っていく可能性すらあるのです」

リッシュ 「企業は今後、物を売るということではなく、サービスを売ることで多くの利益を得ることになるでしょう。ソフトウェア業界では、10年前まで企業は初期に莫大な投資をして、ソフトウェアのライセンスを買い、そのメンテナンス料を継続的に支払っていくというビジネスモデルが存在していました。いわゆる継続ビジネスのモデルです。

 現在では、必要に応じてレンタルして、アプリケーションをダウンロードする購読型(サブスクリプションモデル)が一般的です。ライセンスを買うのではなく、購読する。メンテナンスもアップデートも楽ですし、コスト面でも大きな削減となりました。こういったテクノロジーはソフトウェア業界にとっては大きな打撃となりましたが、そのほかの業界にとってはソフトウェアをより便利に使う機会を提供されたわけです」

リッシュ 「IoTは他の業界へも今までと全く違うビジネスモデルを提示してきました。5年後10年後には自動車を“売る"というコンセプトは時代遅れとなるでしょう。自動車を売るという考えから、“交通手段を売る"というコンセプトに代わるのです。製造業者でさえも製品を100%売るという考え方から、製品に加え50%はサービスを売るというビジネスモデルへと変換されると見ています」
 


M&Aの潜在的なターゲットをどこに求めるべきか

―― 日本企業は、コア事業を伸ばす、異業種に参入するなどの目的の場合、有望な投資分野、対象地域、M&Aの潜在的なターゲットをどこに求めるべきでしょうか。

岩本 「既存の自動車会社は、今後違う分野での競合と戦っていかなくてはならないのではないでしょうか。例えば、今までは、自動車会社のライバルは、もちろん、自動車メーカーでしたが、今後はソフトウェア会社が自分たちの競合になり得るのです。そういった、新しいマーケットのルールにより迅速に対応することが必要不可欠となってきます」

島田 「モノづくりからサービス・コンテンツへの転換によって、AIを活用して別次元で戦う必要が出てきます。テクノロジーとファイナンスの融合する分野では、ホスト・コンピューターやソフトウェア・パケージに依存したモデルではなく、ブロック・チェーンを活用したフィンテックのような新しいビジネス機会が生まれてきます。

 例えば、エレクトロニクス企業のM&A対象先は、同業種の製造ラインや販売網ではなく、海外の有力企業やヘルスケア事業部門がターゲットとなる可能性があります。従来は人口増加が見込まれる新興国において既存の商品を販売する市場開拓のM&Aが注目を集めていました。今後、テクノロジーの分野では、新事業参入のための異業種M&Aは、技術革新の進んだ先進国に目を向けてターゲット企業の選別が必要となります」

岩本 「実際、自動車のテクノロジー分野におけるM&Aは過去5年間で飛躍的に増えております。毎年平均して50-60件のM&A、2016年には600億ドルに到達しています」

―― 日本企業へのアドバイスをお願いします。

ラインハート 「世界の多くの製造業がいろいろな形でテクノロジーを取り入れています。日本の製造業の質が高いことは確かですから…

 

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