M&A専門誌マール

2016年11月09日(水)

Webインタビュー

【第75回】NHC安東会長兼社長が語る「『さが美』TOB提案の顛末とM&Aにおける取締役の役割」

 安東 泰志(ニューホライズンキャピタル 会長兼社長)


アスパラントグループに売却された「さが美」

―― ユニー・ファミリーマートホールディングス(以下ユニー・ファミマHD)は2016年10月11日、同社が保有する呉服店子会社さが美の株式をアスパラントグループが運営する「AG2号投資事業有限責任組合(AG2)」に、TOB(株式公開買付:10月11日が期限)によって売却したと発表しました。さがみの買収については、ニューホライズンキャピタル(NHC)が運営する「ニューホライズン2号投資事業有限組合(NH-2)」がより高い価格で買い取ることを表明していましたが、ユニー・ファミマHDは、10月11日の取締役会で改めてアスパラントへの売却を決議しました。

 NHCの提案を退けた理由については、報道によると、①アスパラントとNHCの提案を比較すると、買収額ではNHCが上回るものの、信頼関係がない中で売却しても、さが美の企業価値を向上できるか疑問、②さが美の賛同表明がなくてもNHCはTOBを実施できたはずだが、NHCはTOBを行わなかったから――となっています。

 この決着について、コーポレートガバナンス・コードの導入などで取締役会の機能強化が求められる中で、その責任を果たしたのかどうか疑問の声も出ています。そこで、安東会長に今回のさが美に対するTOB提案を行った経緯と、提案を退けられた理由に対する反論などについて、うかがっていきたいと思います。

 「まず申し上げたいのは、NHC及び当社が管理運営するNH-2は、16年9月23日付でユニー・ファミリーマートHDに提出した申入書、並びに同年9月30日付で同社に提出した改訂申入書の内容について、同社に対して迅速に諸手続を進めるよう繰り返し依頼しておりました。しかし、ユニー・ファミリーマートHDとの間では何らの実質的な協議の場が持たれず、また、さが美との間では一切の協議の場が設けられることのないまま、ユニー・ファミリーマートHDによる10月11日付のプレスリリースによって、当社案ではなく、アスパラントが運営するAG2が実施するTOBに応募したことを我々は知ったということです。これは、非常に礼を失した対応だと思います」

「条件面ではるかに優れた内容だった」

―― 簡単に経過を振り返りますと、16年8月17日にユニー・ファミマHD(当時はユニーグループ・ホールディングス)はさが美の保有株(発行済み株式の約54%)をアスパラントに売却すると発表しました。その後、アスパラントは18日から1株56円(注)でTOBを始めました(買い付け期間8月18日~10月11日)。これに対してNHCは9月23日に70円でのTOBを提案、さらに30日に90円に引き上げたのですが、ユニー・ファミマHDは10月11日、AG2へのさが美株売却を採用し、NHCを退けた形になりました。

 まず第1の理由として挙げられている「信頼関係がなかった」という点についてはいかがですか。

 「我々は、さが美とは07年頃にさが美のアドバイザーを通じて事業の構造改革に関する意見を聞きたいという要請を受けて、さが美経営陣との間で同社の経営改善策についての意見交換をしています。NHCがかつて着物の卸会社の市田を再生させた実績を持っていたからだと思いますが、そうした意見交換を行った後も、さが美の経営陣とは公私にわたる深い交流がありました。その後、構造改革について意見が一致した改善事項を踏まえて、15年7月にはさが美の取締役に対し、さらに、同年12月には旧ユニーグループ・ホールディングスの取締役に対して、きわめて現実的な再生案を提示しています。この時の提案書では、仮にM&Aを行う場合について、株式と債権の扱いに関する条件として、『ユニーが保有するさが美株式の一定割合を1株75~100円で買い取ること、債権放棄を求めないこと』となっていて、この時点で、すでにAG2案よりも条件面ではるかに優れた内容であったと思っています」



―― アスパラントが16年8月に結んだ契約では、さが美株について、旧ユニーグループHDが保有する全株2199万4126株(発行済み株式数の53.86%)をアスパラントに1株56円でTOBに応じるほか、さが美に対する額面34億円の貸付債権のうち16億円を放棄した上で額面18億円の貸付債権を譲渡するという内容でした。NHCの提案では当初、債権放棄を求めないという内容だったのですか。

 「そうです。さが美には純資産が約50億円ありましたから、債権放棄の必要はないというのが我々の提案でした。しかし、その後AG2によるTOBの期限も迫ってきましたので、『貸付債権のうち16億円を放棄した上で額面18億円の貸付債権を譲渡する』という条件をAG2の提案にそろえ、さらに5億円の資金調達への協力を加えた上で、最終的には買い取り額を、時価(3・6カ月平均株価)を上回る90円としたのです」

―― さが美は、ユニーの店に出店していることから、NHCの再生案でユニーに出店しているさが美の店舗の削減策があったため、ユニー・ファミリーマートHDとしてはNHCの提案を飲めなかったということはないですか。

 「当社から出した提案書にはリストラについては1行も書いてありません。先ほどお話した15年12月に出した再生案には店舗の削減策等も入っていましたが、これについては、さが美が16年3月に『事業構造改革の実施について』を策定し、22店舗の不振店の閉鎖などを含めたリストラ計画を実施していましたから、これ以上の削減策は必要なかったし、当社の今回の再正案では逆に雇用の確保を盛り込んだくらいです」

なぜ、対抗TOBを行わなかったのか

―― NHCの提案を退けた2つ目の理由、さが美の賛同表明がなくてもNHCはTOBを実施できたはずだが、NHCはTOBを行わなかったではないかという点についてはどうですか。

 「決定的な理由は…

 

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政策 , 人(インタビュー) , TOB , 投資ファンド , M&Aプレイヤー , 池田耕造

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