M&A専門誌マール

2015年1月号 243号 : マールインタビュー

No.173 1株1議決権原則の意義を解明し、議決権配分の柔軟化の時代の到来に備える 有料記事です

 加藤 貴仁(東京大学 大学院法学政治学研究科 准教授)

加藤 貴仁(東京大学 大学院法学政治学研究科 准教授)

目次

[1]複数議決権株式の第1号

CYBERDYNE(サイバーダイン)社の上場


-- 先生は複数議決権株式など議決権の問題を研究されています。日本でも複数議決権株式を利用する会社の上場が実現しましたが、どうみていらっしゃいますか。

「ロボットスーツを開発するCYBERDYNE社の普通株式が2014年3月に東証マザーズに上場したのですが、実は東京証券取引所は、複数議決権株式など議決権種類株式の上場について2008年に制度を整備していて、それ以来上場できることになっていました。6年をへて初めて案件が登場したということです。せっかく制度を整備したのですから、使われる制度になってよかったというのが率直な気持ちです」

-- スキームの点はどうですか。

「同社は、普通株式と譲渡制限のついたB種類株式の2種類の株式を発行していますが、普通株式の単元株式数は100株とし、B種類株式の単元株式数は10株とすることで、1株あたりではB種類株主が普通株主の10倍の議決権を持つ形になっています。会社法では1単元の株式数は株式の種類ごとに定めることになっているからです。これにより、B種類株式は事実上の複数議決権株式になっているのです。B種類株式は上場せず、創業者で社長の山海嘉之氏と関連財団が保有しています。2014年9月1日現在の推計値でいうと、B種類株式の発行済種類株式総数はCYBERDYNE社の発行済株式総数の約41%に過ぎませんが、B種類株式に付される議決権の割合は総議決権数の約87%となっています」

-- 単元株を利用した複数議決権株式に問題はないのですか。

「会社法には、明示的な形で複数議決権株式を発行することを認める規定はありません。ですから日本では、例えば、1株に100個の議決権が付与されるというような内容の複数議決権株式は認められないというのが通説的な見解だと思います。その理由は、そういう株式が認められると、会社に少額出資しかしていないにもかかわらず、会社を支配することができてしまう点にあります。学問的には、『過小資本による会社支配』という問題です。これは望ましくないという伝統的考え方があるのです。ですから、正面から、普通株式は1株に1個の議決権、B種類株式は1株に10個の議決権とすることはできないのです。にもかかわらず、単元株を使った事実上の複数議決権株式は認められる。この点は、非常に説明がしにくいのです。ただ、変則的ではあるけど、複数議決権株式にもそれなりの意味がある。百害あって一利なしというものでもない。法的に曖昧なところがあるけど、日本も利用していこうということになったのだと思います」

-- 創業者らが普通株式とB種類株式を合わせると約88%もの議決権を持つ点はどうですか。

「CYBERDYNE社の普通株式を買う投資家は、会社に投資しているのですが、実態は創業者に投資しているのです。もう少し法的な用語を使えば、山海氏という支配株主がいる会社への投資です。複数議決権株式は、これを保有する株主の属人的要素に着目した株式として理解した方がよいと思います。ですから、創業者の議決権保有比率が高くなるのも、議決権種類株式の仕組みを採用する以上、当然のことです」

-- 日本では初めてですが、海外ではどうですか。

「米国では、グーグルやフェイスブックが利用しています。このように議決権に差異がある株式を発行する資本構成のことを、一般的にデュアル・クラス・ストラクチャー(DCS、2層構造)と呼んでいます。2種類の株式を発行して、一つは1株に議決権が1個しかない株式で、こちらは上場して一般投資家に買ってもらう。もう一つは議決権を10倍とか多くして、創業者らが継続保有する。CYBERDYNE社のスキームは、これとよく似ています。日本では初めてですが、国際的な資本市場で見れば、初めてのケースではありません。同社の会社の特徴を見ても、こうした議決権種類株式を導入することにそれなりの理由があると思っています」
 

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法制度 , 人(インタビュー) , 裁判 , 川端久雄

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