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M&A専門誌マール

2017年08月02日(水)

「M&A基礎講座」 未上場企業買収後のPMIの実務 ~CFOの視点から~

第1部 「財務経理」 第1回 PMIにおける「月次決算」の必要性

 横張 亮輔(株式会社エスネットワークス 経営支援第1事業本部 マネージャー)

1.はじめに

 
本連載では事業会社又はプライベート・エクィティ・ファンド(以下「ファンド」)が、内部管理体制が整備されていない未上場企業を買収した場合を想定し、管理部門におけるPMI(Post merger integration)の実務について全8回にわたって連載します。

 企業は成長を目的にM&Aを実施しますが、その後の事業、社風、管理体制等の統合作業であるPMIがうまくいかずに、見込んでいたM&Aの効果を実現できないケースが多数存在します。特に、未上場企業を買収した場合は、管理部門の統合作業において、上場企業にはない様々な課題が出てきます。

 本連載では、M&Aを成功させるためのPMIの実務について、管理部門の統合作業を担うCFOにとっての主要な課題及び改善策等という視点から解説します。  

 全8回のうち、1回から3回は「財務経理」、4回、5回は「経営企画」、6回は「IT」分野について解説します。そして、7回、8回は各々「製造業」、「飲食業」における業種別のトピックをテーマとする予定です。

2.PMIにおける「月次決算」の必要性

 当たり前の話ですが日本ではすべての企業に対して決算を求めています。それは任意ではなく義務です。会社法により、株式会社は各事業年度に係る計算書類(貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、個別注記表)及びその附属明細書を作成する必要があります(会435条第2項、計規59条第1項)。さらに主に上場会社では、金融商品取引法により、決算開示が必要です。しかし、いずれの法律又は制度においても月次決算を行うことを定めているものはありません。例えば会社法では各事業年度、すなわち年に1回の年度決算ですし、金融商品取引法においては、四半期に1回の四半期決算です。したがって、月次決算を行うのはあくまで会社の任意によるものです。そして実際に月次決算を導入している未上場企業はそれほど多くはありません。

 このような前提のもと、本稿ではPMIにおいてなぜ、そして、「敢えて」月次決算を導入する必要があるのか、管理体制が未整備な未上場企業を念頭に月次決算導入のポイント等を説明したいと思います。

3.PMIにおける適正な月次決算を導入する意義及び目的

 そもそもPMIにおいてなぜ適正な月次決算を導入する必要があるのでしょうか。年度決算ではどうしていけないのでしょうか。

 PMIでは買収した事業会社又はファンドから新しい経営陣が派遣され、既存の経営陣に代わって企業運営を担うケースが一般的と考えられます。新経営陣は適時に企業の経営実態を把握し、経営判断を下すことが求められますが、現代の企業を取り巻く環境は急激に変化しており、1ヶ月で状況が変わることも事業の内容によっては十分にありえます。また、新経営陣にとってはその環境における経営上の差配の「感覚」が従来の経営陣(オーナー)と比べてもまだ研ぎ澄まされているわけでもありません。そのため、年度決算では環境の変化に対応できず、経営判断を誤る又は判断が遅れる等の弊害が生じます。月次決算を行うことで、企業の現状を適時に把握することができ、様々な施策を打つ上で必要な情報を取得することができるわけです。

 具体的には月次決算が行われ、決算数値を分析(予算実績差異分析、増減分析等)し、その結果を取締役会等の場で経営陣に報告する、という流れになります。経営陣はこの報告をもとに現状の経営実態がどうなっているのかを理解し、将来どのようなことが起きるのかを予測し対策を打ちます。すなわち、月次決算とは、経営判断の根幹であり、出発点と考えることができます。この出発点に誤りがあれば当然に経営判断も誤ってしまいます。適正な月次決算を行うということは、適切な経営判断を下すためにはなくてはならない基礎の部分であると整理できます。

 それでは適正な月次決算は本当に経営実態を把握できる、そして経営判断に資する情報を提供してくれるものなのか、ということについて考察してみましょう。筆者はこのような信頼しうる経営情報の要件として、①比較可能性②適時性③客観性の3つを充足する必要があると考えています。

 ①比較可能性:他の企業と比較ができること。また同一企業で期間比較ができること。
 ②適時性:経営判断を行うタイミングにおいて「適切なタイミング」の情報が提供されていること。
 ③客観性:情報が客観的であり、属人的でなく恣意性の介入余地がないこと。

 適正な月次決算に当てはめてみると、この3つの要件を満たしていると整理できます。

適正な   =   比較可能性
月次   =   適時性
決算   =   客観性


①比較可能性

 いわゆる公正妥当な会計基準を適用していれば決算は適正であり、同じく公正妥当な会計基準をもとに決算を行っている他の企業と比較できます。また同一の事象は同じ会計処理を適用することになるため、同一の企業での期間比較もできます。そのため適正な月次決算は比較可能性があると言えます。

②適時性

 経営指標を取得できるのが年に1回であれば、適時に経営実態を把握できるとは言えません。どんなに適正な情報であっても、時間が経過すれば、経営環境が激変している昨今においてはその価値が早いタイミングで毀損していきます。この点、月次決算を行えば毎月企業の経営実態を適時に把握することができ、適時性があると言えます。

③客観性

 月次決算は、「数値」で報告されます。数値は一定の恣意性の介入を排除します。例えば全世界の人が「100」という数値を聞けば、同じように「100」を想像できます。これが「良い、悪い、大きい、小さい」等の指標では、人によって解釈の程度が異なり、共通認識を構築するのが難しくなります。月次決算は「数値」であるという点で客観性があると言えます。

 3つの要件を検討してきましたが、適正な月次決算は比較可能性、適時性、客観性を備えた経営情報であり、経営判断に役立つと言えるため、PMIにおいて適正な月次決算を導入する必要があると筆者は考えています。

 それでは次に・・・

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株式会社エスネットワークス

■筆者略歴
横張亮輔(よこばり・りょうすけ)
慶應義塾大学卒業後、株式会社エスネットワークスに入社。IPO準備企業での経理実務支援、未上場会社での経理BPR 業務、上場企業での開示資料の作成支援、ベンチャー企業でのIPO支援業務等に従事。その他、バリエーション業務、デューデリジェンス業務、フィナンシャル・アドバイザー業務を多数経験。直近ではファンド投資先のPMI支援を主に担当。公認会計士。


[関連記事] 【エスネットワークス】 M&A後に必要な現場力を常駐支援で提供して戦略実行を実現する(マール 2015年12月号)

 

 

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