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M&A専門誌マール

2017年11月14日(火)

「M&A基礎講座」 未上場企業買収後のPMIの実務 ~CFOの視点から~

第4部 業種別 第8回 飲食業におけるPMI

 熊谷 知範(株式会社エスネットワークス 経営支援第1事業本部 経営支援第2部長)

1.はじめに

  前回は業種別トピックス第1弾として「製造業」のPMIのポイントについて記載させていただきました。最終回である第8回は未上場の「飲食業」を上場会社またはPEファンドが買収する際、CFOがPMI実行時に留意すべき事項について記載させていただきます。

2.飲食業の特徴

(1)直営店モデル・FCモデル

  飲食業のビジネスに携わる上で対象会社が直営又はFCのどちらのモデルを中心に事業展開を行っているかを認識する必要があります。以下で顧客、店舗管理、出店資金の区分からそれぞれのモデルの特徴を記載します。


 

  同じ飲食業を運営している会社でもどちらのモデルを中心に事業展開しているかで誰が直接的な顧客かが異なります。また、店舗管理の関わり方が異なることにより自社内で確保すべき必要な人材の数が異なります。さらに、出店の必要資金が異なることにより資金需要のタイミングおよび金額の多寡が異なります。

(2)新規店と既存店別の分析

  飲食業、特に多店舗展開している飲食業の場合、会社全体の売上・利益のみならず、新規店と既存店に分けた上で売上・利益を把握しなければならないケースが多いことも特徴です。例えば、全社ベースで毎年増収増益だったとしても、それが新規出店を積極的に進めている結果として、売上が増加しているだけで、実は、既存店の売上が低下しているような場合があります。既存店と新規店を区分した上で、既存店については昨年対比何パーセント売上が増減したかを、新規店は既存店なみの売上が確保されるまでの動向について検証するなどチェックするポイントが違うからです。

(3)労務管理

  多店舗展開している飲食業は営業時間が深夜に及ぶことが多く、従業員の労働時間が長期化しやすい業種です。そのため、労働市場の中でも飲食業は求職者から敬遠されやすく、結果として人材獲得難となっているケースが多いと思われます。さらに、多くの未上場会社で飲食業を運営している会社は労働条件の遵法化に対応するために近年は、従来にもましてタイムカードの打刻を適切に行う等の対応を必要とするケースも多く結果として多くのコストを負担せざるを得ない状況となっています。

(4)入金先行モデル

  飲食業は基本的に一般消費者が顧客であり、来店後に現金またはクレジットカードで決済を行い、即時に入金がなされます。一方で各種経費の支払いは掛取引が多いため、食材を仕入れてから一定期間後に支払いが発生します。結果として飲食業では入金が先行する場合が多いため、資金繰りに窮することは滅多なことでは生じないはずです。その為、仮に飲食業が資金繰りに窮している場合、「特殊な事情の有無」をまず把握すべきと考えます。最も多くあるパターンは新規出店に関する資金支出が先行する場合でしょう。

3.飲食業のPMIでCFOが留意すべき事項

  ここからは飲食業のPMIでCFOが留意すべき事項について記載します。

(1)業績管理

  飲食業のPMIを行う上でまずは対象会社がどのように業績管理を行っているかを下記の例に従って把握し、それらを踏まえて適切な管理方法を検討し、導入することになります。

①新規店、既存店の区分

  先述したとおり、多店舗展開している飲食業の場合、新規店・既存店に区分して業績を管理すべきです。留意すべきは新規・既存の判断基準を明確にすることです。新規店は一定期間の時が経てばいつかは既存店という区分で業績を把握する必要がありますが、この期間設定はそれぞれの会社が新規店の立ち上がりにどの程度の期間を要すると考えているかに大きく依存します。通常、新規店は開店時に多額の設備投資(内装設備、店舗の消耗費品の購入)を要します。また、オープン直後の認知度向上のために販売促進策を立案し通常より多くの資金を投下します。さらに、十分なサービスを提供し、固定客を獲得するために通常より多くの人件費が増加します。

  このように新規店のオープン後は費用が多く発生する傾向にあるものの、時がたつにつれ、コストは減少し、売上とコストの関係が収束していきます。この収束が一般的に新規店舗出店後の何ヶ月後に到来するか、到来するように当初想定した損益モデルが設計されているかを勘案して新規店から既存店に変更するかを決定します。

②F率、L率、R率

  直営店舗モデルの飲食業では…

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株式会社エスネットワークス

■筆者略歴
熊谷知範(くまがい・とものり)
慶應義塾大学卒業。公認会計士試験合格後、株式会社エスネットワークスに入社。未上場会社での経理実務支援、未上場会社での経理BPR業務、上場企業でのIFRS導入支援、ファンド投資先での管理部長代行業務に従事。その他、バリエーション業務、デューデリジェンス業務、フィナンシャル・アドバイザー業務を多数経験。直近ではファンド投資先のPMI支援を主に担当。

[関連記事] 【エスネットワークス】 M&A後に必要な現場力を常駐支援で提供して戦略実行を実現する(マール 2015年12月号)

 

 

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