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M&A専門誌マール

2017年09月06日(水)

「M&A基礎講座」 未上場企業買収後のPMIの実務 ~CFOの視点から~

第1部 「財務経理」 第3回 PMIにおける「全体効率化」の必要性

 横張 亮輔(株式会社エスネットワークス 経営支援第1事業本部 マネージャー)

1.全体効率化の重要性

 買収後は被買収企業である未上場企業の財務経理部門に求められる役割は極めて大きくなります。M&A前には会社法や税法の必要最低限の要請を満たしていればよく、多くは日々の入出金の対応や年度の決算を行うだけで十分に役割を果たせていたのかもしれませんが、PMIの局面においてはこのような役割だけでは不十分です。買収後においては、上場会社に買収された場合でも、ファンドに買収された場合でも財務経理部門に求められる役割は従前と比べて格段に大きくなります。

 上場会社に買収された場合には、買収当事者の上場会社のグループ会社として金商法の決算開示に耐えうる決算体制の構築が求められ、CFOにはこのような決算体制を築き上げる責任があります。

 ファンドに買収された場合にはスピーディなモニタリングの観点から月次での業績報告が重要視され、CFOには実績数値の報告に加えて予算との比較や前年同月との比較を行い、企業の現状を適時に把握し報告する責任があります。

 とにもかくにもPMIのフェーズではCFOを筆頭に財務経理部門には新たに対応しなくてはならない業務が劇的に増加します。当然のことですが、従来行ってきた業務も実施しなければならないため、CFOには財務経理部門の全体効率をあげることで、既存の業務だけでなく新規の業務も実行することが求められます。

2.全体効率性の検証

 CFOが採用しうる全体効率化の手法の具体的な話の前に、本稿では全体効率性を検証する上での基準となる指標を次のとおり定義します。

   

 一般的に効率性についてはインプット(投資)に対して、どれだけアウトプット(生産)を生みだすかで検証するケースが多く、本稿もこの指標で検証します。また次の前提を置きます。
 

  ① アウトプットは定数(あるべき財務経理部門の水準)とする。
  ② インプットの範囲を財務経理部門に関連する業務を行う人的投資(人件費)とシステム投資(システム費用)に限定する。
  ③ 人的投資のうち、時間単価は定数(一定)とする。
  ④ 人的投資とシステム投資は反比例の関係(一方が増加すると一方が減少する)とする。


 上記の前提の場合に、アウトプットが定数であることから、効率性を向上させるために検証すべきことは、いかに分母のインプットを減少させるかという点になります。インプットを更に分解すると次のとおり表すことができます。

   

 したがって、CFOが全体効率化の手法を取るべき方向性は、①業務量の削減、②1業務当たり作業時間の改善、③人的投資とシステム投資のバランスの是正の3つのパターンと整理できます。そしてこの3つのパターンについて検討するうえでは財務経理部門の現状をまず把握することが重要になります。

3.財務経理部門の現状把握

 PMIではCFOは、買収当事者から派遣又は招集され新しく就任するケースが多いのではないでしょうか。仮にCFOがM&A前から長きにわたって、企業に在籍していれば、現場で業務の見える化がなされていなくとも、経験則的に把握することは可能かもしれません。しかし、買収後に新たに就任したCFOの場合は現場の抱えている業務をいきなり全て把握することは困難です。当然のことですが、業務の内容を把握できていなければ、いかに優秀なCFOであっても、財務経理部門の全体効率性を向上させることはできません。そのため、まずCFOが最初にすべきことは業務の棚卸・見える化を行い、財務経理部門の現状を把握することです。以下にその作業工程の大枠を示します。

(1)はじめるまえに ~趣旨の説明~

 業務の棚卸・見える化が成功するかどうかは、現場の理解や協力を得ることができるかどうかにかかっています。そのためには何故業務の棚卸や見える化を推進するのか、それが現場にとってどのようなメリットがあるのかをCFOから現場に丁寧に説明することが肝要です。特に買収後に就任したCFOの場合には、時間的理由から現場との信頼関係が築けていない場合があります。場合によっては、現場からは買収当事者から送りこまれてきた敵のような認識を持たれている場合もあります。このような状況の中では、CFOが現場に対して、業務の棚卸・見える化を行うように指示を出しても、表面的には指示に従い業務の棚卸・見える化を実行するとしても内心では「どうして自分たちが手間のかかることをしなくてはならないのか。」、「この後どのようなことが起きるのだろうか。効率化の先にはリストラがあるのではないか。」といった反発や不安を生じさせてしまうおそれがあります。表面的な情報のみでは効率化の効果も限界があります。

 また、これもよくあることですが、未上場企業の場合は特に・・・

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株式会社エスネットワークス

■筆者略歴
横張亮輔(よこばり・りょうすけ)
慶應義塾大学卒業後、株式会社エスネットワークスに入社。IPO準備企業での経理実務支援、未上場会社での経理BPR 業務、上場企業での開示資料の作成支援、ベンチャー企業でのIPO支援業務等に従事。その他、バリエーション業務、デューデリジェンス業務、フィナンシャル・アドバイザー業務を多数経験。直近ではファンド投資先のPMI支援を主に担当。公認会計士。


[関連記事] 【エスネットワークス】 M&A後に必要な現場力を常駐支援で提供して戦略実行を実現する(マール 2015年12月号)

 

 

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