マール最新号

特集

第4産業革命と大企業・ベンチャー連携によるオープンイノベーション戦略
2018年3月号 281号(2018/02/15発売)

■新シリーズスタート! M&A基礎講座「事業承継M&Aの法務」(ソシアス総合法律事務所 高橋弁護士)

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迅速かつ大胆な事業再編の促進に向けた税制改正及び関連法改正について

[寄稿・寄稿フォーラム]
迅速かつ大胆な事業再編の促進に向けた税制改正及び関連法改正について 有料記事です

 経済産業省 経済産業政策局 産業組織課 業天 邦明/越智 晋平/大草 康平
1 はじめに   我が国企業の迅速かつ大胆な事業再編を促進するための方策の一つとして、経済産業省は、自社株式を対価とするM&Aの円滑化と、スピンオフ実施の円滑化に関する税制改正要望を行った。昨年末に決定された平成30年度税制改正大綱では、これらの要望を受けた内容が盛り込まれ、税制改正を行なうものとされている。また、本年2月9日に閣議決定され第196回通常国会に提出予定の「産業競争力強化法等の一部を改正する法律案」においても、自社株式を対価とするM&A及びスピンオフ実施の円滑化のための支援措置として、産業競争力強化法上の会社法の特例の新設ないし拡充が盛り込まれる予定である。このように、税制と会社法特例を一体的に措置し、迅速かつ大胆な事業再編を後押しする政策が講じられる見込みであることから、当該措置の政策的背景と概要について以下で解説する。 2 迅速かつ大胆な事業再編を促進する背景   「第4次産業革命」の進展する中、ビッグデータに代表される情報処理可能なデータの飛躍的増大や、コンピュータの計算能力の向上、人工知能(AI)の発達等の技術革新に応じて、経済社会構造は大きな転換点を迎えている。従来の変化と比較してスピードが早く、業種間の垣根を越えた変革がグローバル規模で進展している。このような、競争環境が急激に変化する状況においては、大胆な事業再編により、企業外の経営資源・技術の取り込みや、従来の事業構成の見直しを加速することで、経営資源を成長性・収益性の見込める事業に振り向けていくことが不可欠になっている。特に、我が国と諸外国を比較すると、我が国では急速に成長する新興企業が経済成長の牽引役になるといった活発な新陳代謝は生じておらず、また、多角化した日本の大企業は同種の欧米企業よりも格段に営業利益率が低い状況となっている(図表1参照)。   こうした問題意識から、昨年6月に閣議決定された「未来投資戦略2017」では、「第4次産業革命の進展というグローバルな環境変化の中、「稼ぐ力」を高めるためには、コーポレートガバナンス改革の取組の深化と併せ、事業ポートフォリオを機動的に見直し、経営資源を成長性・収益性の見込める事業に振り向けていくことが必要である。このため、株式を活用した再編の促進策も含め、事業ポートフォリオの迅速な転換など大胆な事業再編を促進するための方策について広く関係制度の検討を行い、来年度を目途に必要な制度的対応を講じる」こととされていたところである。   この政府方針を踏まえ、経済産業省では、迅速かつ大胆な事業再編の手段として有効であり、諸外国では積極的に活用されているにもかかわらず、我が国では実務上活用が進んでいない自社株式を対価とするM&Aとスピンオフの実施を円滑化するため、税制と会社法特例の両面から一体的に支援することとし、平成30年度税制改正要望及び産業競争力強化法改正案の検討を進めてきた。 3 自社株式を対価とするM&Aの円滑化 (1)改正経緯   M&Aについて我が国と欧米を比較すると、我が国では大規模案件が少なく(図表2参照)、また、大規模案件では株式対価が積極的に活用されている欧米に対し、買収対価が現金に限定されており(図表3参照)、自社株式を活用した迅速かつ大胆な事業再編が行われていない状況にあると考えられる。   自社株式を対価とするM&Aは、買収会社にとって、多額の金銭の流出を伴わずに大型の買収を実施することが可能となるため、手元資金に余裕がないが株式市場で将来性が評価されている新興企業等による買収の機会の拡大や、手元資金を成長に向けた設備や人材への投資に回すことが可能となるという特徴がある。また、買収対象会社の株主にとっても、買収会社の株式を所有することにより買収によるシナジーを享受できる、買収終了後も買収対象会社の株式を一部保有し続ける場合、その成長や業績向上による利益を享受できるという利点がある。このため、特に、売り手である買収対象会社の株主が企業の創業者であり、買収後も経営をリードするような場合には、買収対象会社の株式を保有し続けることにより買収後も引き続き企業価値向上に向けて努力する強いインセンティブを持つことになる。   このように、自社株式を対価とするM&Aは、買い手である買収会社による新陳代謝の取組や、売り手である買収対象会社の株主を含めた企業価値向上の取組を促すことを通じ、経済全体に好影響をもたらすものと考えられる。   このようなメリットがあるにも関わらず自社株式を対価とするM&Aが我が国であまり用いられていない要因について、我が国の制度面に目を向けてみる。

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第127回 買収か資本参加か:海外子会社・投資先のコントロールはどうあるべきか(2)

[M&A戦略と会計・税務・財務]
第127回 買収か資本参加か:海外子会社・投資先のコントロールはどうあるべきか(2) 有料記事です

 山内 利夫(PwCアドバイザリー合同会社 ストラテジスト)
【はじめに】   筆者は、2017年11月号の拙稿にて、海外子会社・投資先のコントロール(管理、統制、支配)における「経営権の確保」と「内部統制・報告の徹底」の意義について述べた。同稿は、投資全般、すなわち海外現地企業との合弁によるグリーンフィールド投資とM&Aによるブラウンフィールド投資の双方を想定したものであった。   本稿は、同稿を承け、後者の「M&Aによる投資先」のコントロールについて、投資戦略立案からM&A後の統合(Post-Merger Integration:PMI)までのM&Aプロセス全体を見渡し、とりわけPMI段階を意識して一段掘り下げたものである。PMIの技術的留意点については筆者所属先の別の論考に詳しいのでそちらに譲り(https://www.pwc.com/jp/ja/japan-knowledge/pwcs-view/pdf/pwcs-view201701-01.pdf)、本稿では、「『M&A投資先のコントロール』に対する視座」を提示する。 1.マジョリティ出資かマイノリティ出資か   親会社が、自社の行動指針や経営戦略、オペレーションモデルを投資先に浸透させる最も有効な策は、マジョリティ出資により投資先を連結子会社化し、経営権を確保することである。国による違いはあるが、定款変更や解散・合併・大型投資などの重大事項の決議を確実に通すためには概ね3分の2以上の議決権を確保する必要がある。   経営権の確保は、利益の再投資や配分にかかる意思決定権を確保し、グループファイナンスやキャッシュマネジメントの自由度を担保することも意味する。電機A社は「ASEAN地域で上がった収益は、なるべく同国内でプールし、再投資に回そうとしている」とする。数十社に及ぶ同社のASEAN子会社には現地企業との合弁企業も含まれているが、同国内の再投資に回すという方針を打ち出せるのは、同社が全てのASEAN子会社でマジョリティをとっているためである。   勿論、マイノリティ出資は、現地企業とゼロから始めるグリーンフィールド投資であっても、M&Aによって現地企業から持分を取得する(あるいは第三者割当増資を引き受ける)ブラウンフィールド投資であっても、市場参入の一手段として有効である。政治・経済的変動の大きい新興国市場への投資や、リスクとリターンの把握が難しい新規事業、新技術への投資では、最初はマイノリティ出資に留めておき、事業に必要なリソースと投資リスクを「ひとまず」相手方に担ってもらうことが戦略オプションの一つとなる。マイノリティ出資で「試してみてから」、出資比率を引き上げるなり、持分を売却して撤退するなり、次の手を打つことは合理的な策と言える。   とはいえ、経営権を確保できていない場合、共同投資相手と利益の再投資や配分の方針で揉めることがある。機械B社は、あるASEAN加盟国で、現地のオーナー企業と合弁会社を設立した。合弁会社の製品はB社の技術とブランドで製造・販売されていたが、B社はマイノリティ出資者であった。ところが、現地企業の成長につれてオーナーの発言力が高まり、オーナーは自身の持株比率の引き上げや増配を要求することが多くなったという。当該事業はBtoBであり、地元の名士であるオーナーの人脈を無視できず、B社は対処に困っていた。B社は、当該国で既に築いたブランドとその周辺国の市場のポテンシャルを考慮し、オーナーの持分の一部を高値で買い上げ、マジョリティ出資に切り替えた。このような事例に鑑み、「マジョリティをとれない合弁やM&Aはやらない」(精密機器C社)と断言する企業もある。   企業がマジョリティ出資を選択した方が良いのは、

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「東ハト」、「ヨウジヤマモト」で取り組んだ企業再生の全プロセスを語る

[特集・特別インタビュー]
「東ハト」、「ヨウジヤマモト」で取り組んだ企業再生の全プロセスを語る 有料記事です

 辺見 芳弘(インテグラル 取締役パートナー)
  辺見氏は、2004年に菓子メーカー「東ハト」の社長に就任し、民事再生から約3年で再建を完了。その後、07年にプライベート・エクイティ投資会社のインテグラルを創業してパートナーに就任し、09年10月には民事再生適用でインテグラルとスポンサー契約を結んだ世界的なファッションブランド「ヨウジヤマモト」の新会社の取締役会長に就任して同社の再生に取り組んできた。業種の異なる「東ハト」、「ヨウジヤマモト」の企業再生の陣頭指揮を執ってきた辺見氏に、どのように両社の経営改革を進め成功に導いたのか、その全プロセスを聞いた。 ニッチでユニークなスナック菓子で業績を伸ばす 「東ハトが民事再生に至った原因は、一言でいうと多角化の失敗です。本業の菓子事業で冷凍ケーキや粉ジュース、ベルギーワッフルなどに商品を拡大したほか、非菓子事業では光ファイバー、自動車学校、ペットランドなどに手を出しました。しかし、最大の失敗はゴルフ場事業に乗り出したことです。結局、関連会社が所有するゴルフ場の不振から多額の債務を抱えることになり2003年民事再生法の適用を余儀なくされました。   東ハトの菓子部門は収益をあげていましたから、新しい受け皿会社を作って菓子事業を営業譲渡するとともに、東ハトという名前も新会社に移すという形で再生を図ることになり、2004年に私は社長として東ハトの再生のための経営改革に携わることになりました。   菓子業界の歴史を振り返ると大きく3つのフェーズがあります。1つ目は、明治時代に舶来ものを日本市場に持ち込んだというフェーズです。その次のフェーズがSPA(specialty store retailer of private label apparel:製造小売)型のお菓子屋さんで、戦後大きく成長しました。例えば不二家のような会社で、自社で商品を作り、直営店を持って売っていくというタイプです。その後、伸びてきたのが米国のカルチャーブームに乗って出てきたスナック菓子メーカーです。カルビーが代表格ですが、東ハトもこのスナック菓子で業績を伸ばした企業の1社です。   東ハトは1949年小林茂氏が創業した会社で、非常に収益性が高い会社でした。その高収益の要因は、他社がやらない商品を開発していったことです。例えば『キャラメルコーン』という商品は、一般的にスナックといえば塩味が基本と考えられていた中で、パフ・コーンにキャラメル味をコーティングした米国スタイルのスナックとして日本市場に投入することでヒットし、ロングセラーを続けています。また『オールレーズン』という商品は、レーズンが散りばめてあるビスケットで、レーズンを均等に生地に練り込んで焼くのが結構難しいのですが、技術的な問題を解決することで商品化に成功し、これも長寿商品となっています。要は、大手メーカーではやらないようなニッチなカテゴリーの商品を開発することで差別化し、寿命が長い商品を創業者が作り出したというのが成功した要因です」 「焦る経営」が悪循環を生む 「同社の問題の発端は事業承継にありました。息子さんが創業者の後を継いだのですが、冒頭で申し上げたような多角化に乗り出して失敗してしまいます。   経営が苦しくなった企業の経営者がよく陥るのが、焦れば焦るほど手はつけ易いが成功確率の低い事業へ展開していってしまう事です。菓子業界でいうと新製品の乱発という形で現れます。なぜ新製品を出すのかというと、スーパーなど小売り店舗の棚が取れ、売り上げが立って一見資金繰りが確保できたように見えます。しかし、実際には設備投資の資金がありませんから革新性のない“生煮え”の新製品を出すことになり、広告投資も出来ないので、消費者が知らない新製品が沢山出てきて、営業の現場では何が何だか分からなくなって売る気がなくなってしまう。そのうち返品が増え、在庫が増えるということになって断末魔の状況に追い込まれることになるのです。こういうことをやっていると、社員にも計画性がなくなり、無力感とか相互不信が生まれることになります。   こうなった企業の再生には、単なる数字面だけではなく、その企業を構成している社員のモチベーションの向上が重要なポイントになってきます」 企業価値向上のための処方箋 「企業を再生する場合に、基本的にやらなければいけない施策はどういう案件でも大きく異なる訳ではありません。対象企業によってどこに重きを置くかとか、何を優先してやるかという点に違いがあるだけで、後は徹底的にやり抜く事だと思います。   東ハトの企業価値向上のための処方箋は、

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[座談会]企業価値創造に向けた経営改革とは

[対談・座談会]
[座談会]企業価値創造に向けた経営改革とは 有料記事です

 安東 泰志(ニューホライズンキャピタル 会長兼社長)
 弦間 明(資生堂 特別顧問、日本取締役協会 副会長)
 佐野 順一郎(ダルトン・インベストメンツLLC 日本代表兼経営委員)
 (50音順)

会社法改正及びCGC、SSC導入の意義 ―― 2014年8月に経済産業省が取り組む「持続的成長への競争力とインセンティブ~企業と投資家の望ましい関係構築~」プロジェクトの最終報告書、いわゆる「伊藤レポート」が公表されました。その背景には、企業価値創造に向けた経営改革が課題と言われて久しい中、日本企業のROE(株主資本利益率)が依然として低水準で推移するなど、日本企業の経営に対する強い危機感があります。この、通称「伊藤レポート」をお手本として、「アベノミクス」では「コーポレートガバナンスコード(CGC)」と「スチュワード・シップコード(SSC)」からなるコーポレートガバナンス改革の推進が打ち出されました。   日本企業の競争力の評価は低く、それ以上にガバナンス力の評価はもっと低いと言われています。そうした中で、東芝の不祥事も起こり、日本企業のガバナンスに対する関心も高まっています。そこで、企業の競争力を左右する取締役会の役割であるガバナンス問題を中心に日本企業の現状と企業価値創造に向けた経営改革について、資生堂の特別顧問であり日本取締役協会の副会長も務めておられる弦間明さん、グローバルな投資家の立場からダルトン・インベストメンツLLCの佐野順一郎日本代表兼経営委員、日本企業の成長のためのリスクマネーの担い手として多くの企業改革を手掛けてこられたニューホライズンキャピタルの安東泰志会長兼CEOの皆様にお集まりいただき、お話し合いをいただくことにしました。安東会長にはモデレーター役もお願いしております。よろしくお願いします。

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【第7回】企業価値や株主価値を向上させるための経営管理の仕組み

[西山先生のM&A基礎講座 [企業価値評価とコーポレートファイナンス]]
【第7回】企業価値や株主価値を向上させるための経営管理の仕組み

 西山 茂(早稲田大学大学院(ビジネススクール)教授 公認会計士)
 第6回では、企業価値や株主価値とは何か、またそれはどう計算するのか、さらにそれを向上させていくためにはどうしたらよいのか、といった点について学んできました。今回は、その企業価値や株主価値を向上させるための経営管理の仕組みについて学んでいきます。具体的には、EVA®、BSCといった業績評価指標や経営管理の指標やシステムです。  それでは確認していきましょう。 1.EVA®(Economic Value Added:経済的付加価値)  第6回でみてきたように、フリーキャッシュフローモデルをもとに考えると、企業価値や株主価値を向上させるための具体的な方法は、①フリーキャッシュフローをできるだけ多くまた早めに生み出せるように、ビジネスの仕組みをよく検討すること、②適度に有利子負債を活用したりIRをしっかりと行なうことによって、WACCを低下させること、③事業と関係のない資産を有効に活用すること、という3つにまとめることができます。しかし、企業が日々の活動をそのような方向に向けていくためには、このような方針を経営管理のシステムの中に組み込んでいくことが必要です。そのための代表的な業績評価指標がEVA®です。  EVA®はEconomic Value Addedの頭文字をとったものであり、株主や債権者といった企業に対する資金提供者の立場から考えて、企業が事業から獲得している儲けが資金提供者の期待している水準をどの程度上回っているかをあらわす業績評価指標です。これは、1982年に設立された米国のコンサルタント会社であるスターン・スチュワート社が提唱したものであり、同社の登録商標となっています。  具体的には下記のような計算式で計算します。   EVA®(経済的付加価値)    =NOPAT(税引後営業利益)   -(有利子負債+株主資本)×WACC  WACC : 加重平均資本コスト 図7-1 EVA®のイメージ図  この計算式のうち、NOPATは、Net Operating Profit After Taxの頭文字をとったものです。これは・・・ ■西山 茂(にしやま しげる) 早稲田大学政治経済学部卒業。米ペンシルバニア大学ウォートン校よりMBA取得。早稲田大学より博士号取得。監査法人ト-マツ等にて会計監査、株式公開コンサルティング、M&A支援、人材育成などの業務に従事。 2002 年から早稲田大学で教鞭をとり、2006年から現職。会計や財務といった数字をベースに理論と実務の両面から経営を考える授業やゼミを担当している。国内主要企業の監査役を歴任。会計・財務に関する著書多数。公認会計士。 ※詳しい経歴はこちら    

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第4回 事業承継M&Aにおける株式に関する法的論点

[M&A基礎講座 「事業承継M&Aの法務」]
第4回 事業承継M&Aにおける株式に関する法的論点

 高橋 聖(ソシアス総合法律事務所 パートナー 弁護士)
はじめに   事業承継の対象となるオーナー企業の中には、長年にわたり外部者の関与がなく、実質的にオーナー一族のみによって経営されてきた会社も多く存在します。このような会社においては、株式の管理がオーナーの意向のみによってなされ、株式の発行や譲渡について法令上必要とされる手続が取られていない、又は、法令上作成・保管されなければならない書類が作成又は保管されていないことにより、法律上の株式の帰属先が不明確となっている場合も少なくありません。   本稿では、事業承継M&Aの際に、上記のような理由から対象会社の株式について問題が生じる代表的なケースをいくつか取り上げ、法的な論点と実務上の対応策について解説したいと思います。 名義株の問題 (1)名義株とは   多くの事業承継M&Aの対象会社において問題の原因となるのが、いわゆる「名義株」の存在です。名義株とは、一般的には、他人の承諾を得て、その名義を用いて株式の引受又は取得がなされた場合に生じる、形式的な名義上の株主と実質上の株主とが異なる株式のことを指します。   このような名義株は、その動機の適法性・妥当性はともあれ、実務上、主に以下のような理由から生じることが多いところです。   ① 平成2年改正前の商法では、会社設立に際して少なくとも7名の発起人が必要とされていたため、会社設立のために発起人として他人の名義を借用するという実務が行われていた。 ② 真の株主が、何らかの理由で、債権者、税務当局等の第三者との関係において自らが株主であることを秘匿したい場合。 ③ 将来発生し得る相続等を見越して、オーナーが、予め自らの後継者候補を名義上の株主とする場合。   オーナー企業の中には、平成2年の改正商法が施行される前に設立された会社も散見され、また、株主構成も含めた企業統治に外部者が関与していないため、上記②や③を理由とした名義上と実質上の株主との間に齟齬が見られることも少なくなく、一般的な会社と比較して、名義株の存在が問題となる頻度が高いと思われます。 (2)名義株がある場合に生じる問題   M&Aにおける対象会社の株式に名義株が存在する場合、名義株について他人の名義を借用しているオーナー株主(名義借用者=実質上の株主)が、名義株も含めて自らが保有する対象会社株式を売却しようとする際に、名義株について自己の名義をオーナー株主に貸与した者(名義貸与者=名義上の株主)が、自分が真の株主であることを主張し、売却に異議を唱えたり、売却代金の支払を要求するという事態が生じることがあります。   特に、事業承継M&Aにおける対象会社の場合には…   ■筆者略歴 高橋聖(たかはし・きよし) 1993年慶應義塾大学法学部法律学科卒業。株式会社リクルート勤務を経て、1999年より弁護士としてTMI総合法律事務所にて、主にM&A、国際取引、一般企業法務等を取り扱う。2015年にソシアス総合法律事務所を開設し、現在は、事業承継案件を中心に、多数の非上場会社売却案件に売手・買手のリーガルアドバイザーとして関与している。 University of Virginia School of LawにてLL.M.(法学修士号)取得。第一東京弁護士会所属弁護士・米国ニューヨーク州弁護士。    

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[座談会] 海外大型M&Aを成功に導くグローバル組織・人事改革の要諦

[対談・座談会]
[座談会] 海外大型M&Aを成功に導くグローバル組織・人事改革の要諦 ~ドメスティック経営から脱皮するために必要なこと 有料記事です

【出席者】(五十音順)
 梯 慶太(日本板硝子 執行役員 グループファンクション 人事部 アジア統括部長 兼 グローバル人事特命プロジェクト担当部長)
 加藤 雅也(日本板硝子 執行役員 社長付特命プロジェクト担当)
 竹田 年朗(マーサー ジャパン グローバルM&Aコンサルティング パートナー)

【目次】 思い切ったグローバルガバナンスへの発想転換 グローバルの中に呑み込まれた組織 ファイヤーウォールがグローバル化を阻む グローバルな従業員に経営理念を浸透させているか “バリューズ・アンド・プリンシパル”はモーゼの十戒と同じ “インターナル・コミュニケーション”の重要性 NSG(日本板硝子)の組織と一般的な日本企業の組織の5つの違い グローバル組織の設計概念を変更 リモートマネジメントに必要なピープルマネジメント力 グローバルマネジメント育成プログラム 人事部主導の“キャリアパス”ではグローバルな人材育成はできない “幽体離脱”の視点が必要 組織に作り上げていく時に最も重要なのはCEOの能力 思い切ったグローバルガバナンスへの発想転換 ―― 日本企業の海外買収が増勢を続けていますが、買収後のPMIに問題を抱えているところが少なくありません。その背景には日本企業自体がグローバル経営に対応した組織・人事体制を構築できていないことが背景にあるとの指摘があります。そこで今回は、海外大型M&Aを成功に導くために組織・人事改革面でどのような体制を構築すべきなのかについて、2006年の英国ピルキントンのM&Aを機に、大きくグローバル化に舵を切った日本板硝子(NSG)でピルキントン買収プロジェクトのキーパーソンを務めた加藤雅也さんと梯慶太さんのお2人、そして弊誌「マール」で「ポストM&A戦略」の連載をお願いしておりますマーサー ジャパン グローバルM&Aコンサルティング パートナーの竹田年朗さんに議論していただくことにしました。   加藤さんは、米国でのJV工場勤務、北米統括会社(財務戦略、M&Aプロジェクト)などを経験され、01年末より本社経営企画部部長(海外担当)としてピルキントン買収プロジェクトの企画リーダーを務められて、買収完了後、統合推進本部の経営企画担当として英国にも駐在しておられました。また、梯さんは加藤さんの後任として北米統括会社に赴任、その後同社の社長に就任され、北米駐在のまま04年頃からピルキントン買収プロジェクトのメンバーとして参加し主に人事・組織文化の観点から買収構想を準備し、買収と同時に統合推進本部のメンバーとして英国に駐在、その後、コーポレート人事部で日本の統合作業をサポートするとともに、人事部アジア統括部長やグループ人材開発・報酬部長などを務められたグローバル人事・人材開発のエキスパートです。   NSGでの経験を踏まえて、教科書ではわからない大型買収後の組織・人事の大改革、さらにドメスティックな企業がグローバル企業に脱皮するために何が求められるのかという点についてお話合いいただければと思います。   板ガラス業界で世界シェア6位のNSGによる3位のピルキントン買収は、約6160億円という買収金額もさることながら、「小が大を呑む」買収ということでも注目されました。これによって買収後の新会社は業界で世界1位グループへと飛躍を遂げたわけですが、その後、組織を含めた大統合が行われました。まず、加藤さんからピルキントン買収に至った経緯を含めてグローバル化への改革についてお話しいただけますか。 加藤 「ピルキントンの買収の全容をすべて詳しくお話しすると、何時間あっても足りませんので(笑)、まず概略をお話しして、今日の座談会の中で必要な部分についてはその都度ご説明するという形にします。   『小が大を呑む』と言われたこの買収で問題であったのは事業サイズの点だけでなく、グローバル経営の経験やノウハウの点で買収会社と被買収会社の実力が完全に逆転していたということです。買収前のNSGは若干の限られた地域で海外拠点経営の経験はあるものの、基本的には典型的なドメスティック型の日本企業でした。一方、ピルキントンは英国発祥ながらM&Aを活用して欧州、北米、南米の全域及び中国の一部へと海外事業を拡張してきた歴史があり、彼らとしても海外経営を如何にすべきか試行錯誤を繰り返し、この買収が起きた06年の時点でかなり完成されたグローバル経営システムをほぼ整えておりました。   従って、この買収を成立させるにはファイナンシャル・アレンジメントとしてユニークであっただけでなく、PMI設計としても非常にチャレンジングかつ大きな発想の転換が必要とされました。それは何かというと、買収会社が被買収会社を従えて支配し、指導・コントロールするのが当然だという固定概念を捨てること、加えて、せっかく日本企業が買収するのだから日本式経営の強みを注入すれば経営が改善するはずだという自動的な思い込み、これらを発想転換する必要があったということです。   買収企業の持つ収益力、経営力、技術力、戦略、ブランドなどが被買収企業に対して圧倒的に勝る場合は、『買収者のやり方を被買収者に指導する』という考え方で正しいのでしょうが、本件の場合、そうではない。特にグローバル経営の経験蓄積において被買収者の方が圧倒的に勝るという事実、及び、買収後のグループ連結売上は約80%を海外に依存するという構図を冷静に認識した場合、PMI設計は如何すれば合理的で効果的かと考えたわけです。   買収資金のアレンジで手間取り、買収準備は4年を要しました。その過程で弊社トップは随分悩みましたが、結論として、統合新会社のガバナンス基本体系として次の3点を決断しました。(1)執行組織はピルキントンの完成されたグローバル組織体系と管理システムをそのまま保存し、その中にNSGの執行組織を入れ込む。人事配置やサクセッションプランは、国籍・出身会社に関わらず適材適所とする。(2)取締役会と3つの委員会を改造しグローバル経営にふさわしいガバナンス能力と役割を持たせ、かつ執行組織の長であるCEOをグリップする、(3)経営理念、価値観及び長期戦略ビジョンのドラフトはNSG側で立案し、議論・合意を経て新会社に与える(下図参照)。

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【じげん】平尾 丈社長が語る急成長の原動力「M&A戦略とPMI」

[マールレポート ~企業ケーススタディ~]
【じげん】平尾 丈社長が語る急成長の原動力「M&A戦略とPMI」 有料記事です

創業以来増収増益を達成   創業以来、独特なビジネスモデルの展開で増収増益を続けて注目されているのが東証マザーズ市場上場の「じげん」である。同社は2006年6月に、現在はソーシャルゲーム事業や広告事業を運営しているドリコム(東証マザーズ)とリクルートグループの共同出資によって「ドリコムジェネレーティッドメディア」として設立された。08年1月に代表取締役社長にリクルート出身の平尾丈氏が就任して以降、現在の主力事業であるライフメディアプラットフォーム事業に注力して業績を伸ばしてきている。ちなみに、同社の16年3月期の売上高は約50億3173万円(対前期比62%増)、営業利益16億943万円、営業利益率32.0%、当期純利益8億9902万円となっている。   (じげんの創業の経緯等については、MARR online「WEBインタビュー」『急成長ベンチャー「じげん」が打ち出したM&Aファイナンスのスキームと狙い』:2016年8月31日を参照)   同社が掲げるミッションは「生活機会(より良く生きるための選択肢)の最大化」の実現で、08年3月に転職情報検索サイト「転職 EX」をスタートさせたのをはじめ、求人や住まいを中心とした生活情報のプラットフォームとして次々とEXサイトを立ち上げて順調に事業を拡大してきた。その後、09年9月には現在の「じげん」に商号変更し、10年9月にはドリコム及びリクルートグループからのMBOを実施、13年11月に東証マザーズへの上場を果たしている。   上場後は、戦略的M&Aにも積極的に取り組んできており、14年3月には証券業のインターキャピタル証券の100%株式を取得したのをはじめ、同年7月には人材紹介会社向けに基幹システムを提供するブレイン・ラボ、同年9月には理美容業界特化型の求人メディアを運営するリジョブを完全子会社化。さらに16年4月には不動産仲介企業に対してサイト制作及びウェブマーケティング支援を行うエリアビジネスマーケティング(ABM)、17年1月には東海地域最大規模の求人広告企業である三光アドの100%株式を取得して、グループ拡大を図っている。   ライフメディアプラットフォーム事業における運営サイトは既に30サイトを超え、グループ全体のデータベース数は約700万件、月間ユニークユーザー数は約1000万に達している。同社のEXサイトの収益モデルの特徴は、「情報掲載課金」ではなく、実際に案件へ応募や問い合わせが発生した段階で決まった金額をクライアントより受け取る「成果報酬型」の課金体系となっている点にある。メディア構築のエンジンは横展開が容易であることからスピード感を持って事業拡大を進めることを可能にしているといえる。こうしたサービス領域の拡張ともなった同社の成長ドライバーとなっているのがM&Aを中心とする戦略的投資で、同社はこれまでに70億円を投じて8社のM&Aを行ってきている。   そこで、同社の平尾丈社長とM&Aを推進している経営戦略部の寺田修輔部長にじげんの高成長を実現しているM&A戦略とPMI(Post Merger Integration:M&A成立後の統合プロセス)について聞いた。

2018年1月のM&A件数と金額

2018.1.31現在 集計

  IN-IN IN-OUT OUT-IN 合計
件数 (件) 189 47 10 246
増加率 61.5% 0.0% 66.7% 44.7%
金額 (億円) 2,585

13,119

925 16,631
増加率 244.3%

83.3%

-37.4% 77.2%

 *2017年1-12月の日本企業のM&A動向は、こちら

<速報>公表アドバイザー情報

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