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M&A関連法制と実務の最新動向[2017年版]
2017年12月号 278号(2017/11/15発売)

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[座談会] M&A関連法制と実務の最新動向[2017年版]

[対談・座談会]
[座談会] M&A関連法制と実務の最新動向[2017年版] 有料記事です

 秋山 健太(ラザードフレール マネージング・ディレクター)
 髙木 弘明(西村あさひ法律事務所 パートナー 弁護士)
 中村 慈美(中村慈美税理士事務所 税理士)
 武井 一浩(西村あさひ法律事務所 パートナー 弁護士)(司会)
 構成:丹羽 昇一(編集委員)

はじめに 武井 「M&Aに関連した法制や実務の動向について1年間を振り返るということで、2014年から始めた年末の特集座談会も今年で4年目を迎えました。本年(2017年)は、組織再編税制の権威であられる中村慈美税理士、M&A中心に会社法制に詳しく平成26年(2014年)の会社法改正の立案にもかかわられた髙木弘明弁護士に加えて、特に海外M&AのFA業務の実務家としてご活躍のラザードの秋山健太さんにご参画いただき、海外M&Aの最新動向についてもお話しいただこうと思っています。私は、司会の役割に加えて、ファシリテーターとしても発言させていただきますので、よろしくお願いします」 1.2017年の組織再編税制の改正の振り返り (1) 現金対価や自己創設のれん等に関する改正の概要と実務への影響 武井 「本年は、組織再編税制にいくつかの重要な改正がありましたので、税制から議論していきたいと思います。まず、中村先生のほうから、概要のご説明をお願いします」 合併・株式交換における現金対価の場合の取り扱いの改正 中村 「まず合併・株式交換(合併等)における現金対価についてです。ご承知のように、改正前は、合併等の税制適格要件の1つに『金銭等不交付要件』というのがあって、合併の場合であれば、被合併法人の株主等に合併法人の株式以外の資産が交付されない、株式交換の場合であれば、株式交換完全子法人の株主に株式交換完全親法人の株式以外の資産が交付されないこととされていました。要するに、対価として1円でも現金を支払うと税制非適格になる、その結果、対象会社の資産譲渡とみなされ、法人段階で時価評価による課税が生じるという制度だったわけです。従前から、株式一辺倒ではなく現金も混ぜていいではないかという働きかけをしてきたわけですが、平成29年度改正で、やっと『金銭等不交付要件』が緩和されたわけです。具体的には、合併の場合は合併の直前において合併法人が被合併法人の発行済株式の総数の3分の2以上に相当する数の株式を有する場合における合併法人以外の株主等に交付される金銭その他の資産を除いて判定する。また、株式交換の場合も、株式交換の直前において株式交換完全親法人が株式交換完全子法人の発行済株式の総数の3分の2以上に相当する数の株式を有する場合における株式交換完全親法人以外の株主に交付される金銭その他の資産を除いて判定することとされました。   さらに、スクイーズアウト手法として利用される①全部取得条項付種類株式に係る取得決議、②株式の併合、③株式売渡請求に係る承認が株式交換とあわせて『株式交換等』として組織再編税制の対象とされたことも重要です。この場合には、①株式交換等に反対する株主等に対するその買取請求に基づく対価として交付される金銭その他の資産、②全部取得条項付種類株式の取得の価格の決定の申立てに基づいて交付される金銭その他の資産、③株式売渡請求の取得の対価として交付される金銭その他の資産を除いて『金銭等不交付要件』を判定することとされました。   このように、被合併法人、株式交換完全子法人の発行済株式の3分の2以上を保有していれば、金銭交付合併、金銭交付株式交換であっても適格合併、適格株式交換となることが可能となったことから、例えば、スクイーズアウト手法として株式交換を利用する場合、この改正により完全子法人の発行済株式の3分の2以上を保有していれば対価として金銭そのものを交付しても『金銭等不交付要件』に抵触することがなくなったため、今後はあえて1株未満の端数となる交換比率とする必要性はなく、金銭そのものを対価として交付することになると思われます。   また、全部取得条項付種類株式に係る取得決議における端数の株式の交付及びその端数の株式の競売等により得られた代金の交付、株式の併合における端数となった株式の競売等により得られた代金の交付は、金銭等の交付には該当しないこと、さらに反対株主の買取請求、価格決定の申立、株式売渡請求における交付金銭等を除外して金銭等不交付要件を判定することとされたことにより、株式交換以外のスクイーズアウト手法で『金銭等不交付要件』に抵触するのは、全部取得条項付種類株式に係る取得決議において株式以外の資産を対価として交付する場合が考えられます」 「自己創設のれん」について 武井 「引き続き『自己創設のれん』についてお願いします」 中村 「改正前においては、非適格株式交換等が行われた場合の一定の完全子法人、連結納税開始の場合又は連結納税加入の場合の一定の連結子法人については、その保有する資産について時価評価課税が行われることとされていました。この時価評価課税の対象となる資産(時価評価資産)は、固定資産、棚卸資産である土地(土地の上に存する権利を含む。)、有価証券、金銭債権及び繰延資産のうち時価評価対象外資産(含み損益の金額が資本金等の額の2分の1に相当する金額又は1000万円のいずれか少ない金額に満たない場合のその資産等)以外のものとされていました。   したがって、固定資産であれば時価評価対象外資産に該当しない限り、時価評価課税の対象となり、土地や建物といった有形固定資産のみならず、営業権のような無形固定資産も対象とされていました。そのため、完全子法人・連結子法人が超過収益力的な価値を保有していると考えられる場合には、会計上はその価値を営業権として資産計上していない場合であっても、税務上は営業権として資産計上(時価評価により評価益を計上)する必要があるという見解が有力視されていました。これが、いわゆる自己創設営業権(自己創設のれん)の計上の問題でした。   平成29年度改正では、時価評価対象外資産の範囲の見直しがされ、時価評価対象外資産に帳簿価額が1000万円未満の資産が追加されました。   したがって、帳簿価額が少額の資産が時価評価対象外資産となったことのみならず、自己創設営業権の計上の問題が解消されたことになります。なぜならば、自己創設営業権は、資産計上されていない簿外の資産であり、その帳簿価額は0円(1000万円未満)であるため、時価評価対象外資産となるからです。   自己創設営業権の計上の問題は、特に株式買収により完全子法人とした法人がいる場合の連結納税開始時又は連結納税加入時の時価評価課税において論じられてきました。これは評価益に対する税負担の問題のみならず、そもそも自己創設営業権を計上すべきか、計上するとしてもその評価方法はどうすべきか等、その取り扱いに不透明な部分があり連結納税の導入等の際の課税リスクとなる場合もありましたが、今後はそのような課税リスクはなくなったものと思われます。   なお、自己創設の営業権の計上問題は解消されたのですが、別途、営業権の償却について、技術的な改正がありましたので補足しますと、営業権の償却期間は5年(60カ月)なのですが、従前は、営業権を取得した当該事業年度に5分の1の償却が認められていました。しかし、改正後は、期中取得の場合は月割り按分で、取得してから年度末までの月数分しか償却できなくなりました。他の減価償却資産の場合は、月割り償却をしますので、それと合わせたということかと思います」 武井 「自己創設のれんの問題がなくなった結果として、税制非適格の株式交換の場合でも、時価評価による課税のインパクトが少なくなったといえますね」 中村 「その通りです。非適格も使いやすくなり、応用範囲が広がりました」 スクイーズアウトがやりやすく 武井 「スクイーズアウトの税制上の取り扱いも整理されました」 中村 「スクイーズアウト、いわゆる少数株主排除の手法として、現金合併と、特に現金株式交換が使えるようになったのは大きいと思います。3分の2以上の株を持っていれば税制適格再編でできるということですから」 武井 「今回の改正全般にかかわるのですが、『何を支配しているか』という考え方に基本的な見直しがなされように思います。つまり、3分の2の株を既に保有している場合に、少数株主に現金を渡しても、資産に対する支配は失われていない。既に支配していて、その支配関係は変わらないのだから、現金を渡しても、法人レベルの課税はしない。そういう整理かと思います」 中村 「そういうことですね。ただ、もちろん現金を受け取った少数株主は課税を受けます」 武井 「確かに株主課税はあります。あと念のための確認ですが、この3分の2は、合併と株式交換の話で、全部取得条項付種類株や株式併合を使った場合については規定されていません。   全部取得条項付種類株、株式併合、特別支配株主の売渡請求の3つの選択肢が『株式交換等』という形で、組織再編税制の中には組み込まれたわけですが、どういう考え方の整理をしているのでしょうか」 中村 「ご承知の通り、従来は税制の『金銭等不交付要件』があるため現金株式交換によるスクイーズアウトが事実上できないため、その代替手法として、全部取得条項付種類株式や株式併合が使われていました。そこに、平成26年の会社法の改正で、特別支配株主の株式売渡請求制度ができました。ところが、出来上がりはすべて株式交換と一緒なわけです。経済実態が同じであれば、税の取り扱いも同じにしようという考え方で、平成29年度改正でこの4つを合わせて『株式交換等』と定義したということです」 武井 「あと、どの手法が使いやすいかは、ケースバイケースですね」 中村 「単純には、売渡請求は、会社法上9割取得しないとできませんから、一番ハードルが高いでしょうね。そういう意味では、第一段階のTOBで、どれだけ株が取得できるかによって、変わってくる。会社法の手続きとの関係もあるでしょうから、そのあたりは、弁護士の先生方の領域かと思います」 武井 「少なくとも税制的には、大きな差はなくなったという理解でよいでしょうか」 中村 「そういう意味では、1つだけ留意点があります。全部取得条項付種類株式も株式併合も、今回の改正は、1株未満になる端数株主に対して交付される現金については組織再編税制の対象として適格とするということなので、端数ではない株主に現金を交付した場合は別です。ちょっと分かりづらいですが」 武井 「ご指摘の通りです。あと、例えば、株式併合はスクイーズアウト目的以外でも利用されていますから、そういうものは射程外ということですね。   あと株式併合等では、支配株主以外の株主の一部、例えば前オーナーや経営陣の一部を残してスクイーズアウトするような2人残しのケースがあるのですが、これは射程外ですね」 中村 「それは、射程外だと思います。支配株主とその他の残る株主に資本関係があれば話は別ですが、全く他人の場合、例えば創業者を残したいといった場合は駄目でしょうね」 武井 「それから、この3つのスクイーズアウトの手法が、組織再編税制に組み込まれるので、もちろん適格要件を満たしていればという前提ですが、連結納税選択のときに繰越欠損金の承継が可能になったと考えてよいのでしょうか」 中村 「そうですね。今までは、組織再編税制の範囲外ですから、繰越欠損金の継承とは無縁でしたが、改正後は、スクイーズアウトして100%子会社化した会社の繰越欠損金は、税制適格要件を満たしていれば、持ち込めるということになります。当該会社の所得の範囲内でしか使えないという制約はありますが、今までは切り捨てられて来た繰越欠損金が使えるわけですから、1歩前進と言えるでしょう」 スクイーズアウト法制改正における法的留意点 武井 「では髙木先生、補足コメントをお願いします」 髙木 「すでに議論されている通り、現金対価のスクイーズアウトの手法については、従前は、その税制上の取り扱いの差異を理由に、完全子法人となる法人の資産の時価評価課税がされない、株式併合や全部取得条項付種類株式の取得を用いて、端数処理によりスクイーズアウトをするという手法がとられてきました。しかし、今回の改正によって、完全子会社化の取引に関する課税上の取り扱いが統一化されたため、今後は、端数処理を必要とせず、会社法上の手続も比較的簡便な現金株式交換や現金合併が利用される事例が増えていくと予想されます。   また、例えば少数株主の人数が少なく、株式譲渡による完全子会社化が可能な場面でも、たとえば現金株式交換を選択すれば、各株主に同一の条件の下で完全子会社化をすることができる上、税務上も適格株式交換の要件を満たせば繰越欠損金も利用できるというメリットも得ることができる可能性があります。このような効果を考慮して、現金株式交換を選択する事例が出てくるかもしれません。   なお、全部取得条項付種類株式の取得については、会社法の平成26年改正後、端数処理に関していわゆる『1株未満問題』(全部取得条項付種類株式の取得に反対する者に対価が割り当てられない結果、反対者が多い場合に少数株主に割り当てる株式の端数が合計しても1株に満たず、端数処理ができなくなる可能性が生じるという問題)の存在が指摘されており、平成26年改正後は株式売渡請求や株式併合が用いられることが一般化していますが、今後、これらの手法に加えて現金株式交換も選択肢としての重要性が増すと考えられます」

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【DCMベンチャーズ】日本のメガベンチャーを育成するシリコンバレー発VC

[M&Aの現場から]
【DCMベンチャーズ】日本のメガベンチャーを育成するシリコンバレー発VC

 本多 央輔(日本代表、ゼネラルパートナー)
  DCMベンチャーズ(以下DCM)は、1996年IT事業に特化したベンチャーキャピタルファンドとして米国シリコンバレーで設立された。設立以来、主にアーリーステージ(創業初期)企業に投資をしているが、これに加え一部戦略的に創業中期以降の企業にも投資を実行している。シリコンバレーのほか、北京、東京、上海にオフィスを構え、これまでに米国やアジアの300社を越えるテクノロジーベンチャーに投資を実行、累積運用総額は約3500億円に上っている。現在運用しているファンドは、2016年7月に組成した8号ファンド約530億円のほか、100億円規模のシードステージ・新興テクノロジーファンド(A-Fund2)、170億円規模のレイターステージ向けファンド(Turbo Fund)の合わせて3ファンド、約800億円。 「基本的に、すべての投資案件の意思決定は5人のグローバルなゼネラルパートナーがそれぞれ1票を投じて決めます。ゼネラルパートナーは、米国に共同創業者のデイビット・チャオともう1人、それから中国に2人、それと私です」   こう語るのは本多央輔(おうすけ)・日本代表、ゼネラルパートナー。1974年生まれ。一橋大学法学部卒業、96年三菱商事に入社。自動車の海外営業、事業投資等を経験後、e-businessの企画・推進、投資関連業務、新規事業・新機能開発等の業務に従事。その後、04年エイパックス・グロービス・パートナーズ(現グロービス・キャピタル・パートナーズ)を経て、07年DCMに転じ、ゼネラルパートナー、日本代表に就任した。 「日本のベンチャー企業には96年の創業当時から投資していますが、最近はいい意味で日本のベンチャービジネスの環境が変わってきていると考えています。今までのように、とりあえず上場して時価総額が20~30億円ついてよかったということではなく、いわゆるメガベンチャーといえる企業が出てくる状況になってきました。

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[座談会]企業価値創造に向けた経営改革とは

[対談・座談会]
[座談会]企業価値創造に向けた経営改革とは 有料記事です

 安東 泰志(ニューホライズンキャピタル 会長兼社長)
 弦間 明(資生堂 特別顧問、日本取締役協会 副会長)
 佐野 順一郎(ダルトン・インベストメンツLLC 日本代表兼経営委員)
 (50音順)

会社法改正及びCGC、SSC導入の意義 ―― 2014年8月に経済産業省が取り組む「持続的成長への競争力とインセンティブ~企業と投資家の望ましい関係構築~」プロジェクトの最終報告書、いわゆる「伊藤レポート」が公表されました。その背景には、企業価値創造に向けた経営改革が課題と言われて久しい中、日本企業のROE(株主資本利益率)が依然として低水準で推移するなど、日本企業の経営に対する強い危機感があります。この、通称「伊藤レポート」をお手本として、「アベノミクス」では「コーポレートガバナンスコード(CGC)」と「スチュワード・シップコード(SSC)」からなるコーポレートガバナンス改革の推進が打ち出されました。   日本企業の競争力の評価は低く、それ以上にガバナンス力の評価はもっと低いと言われています。そうした中で、東芝の不祥事も起こり、日本企業のガバナンスに対する関心も高まっています。そこで、企業の競争力を左右する取締役会の役割であるガバナンス問題を中心に日本企業の現状と企業価値創造に向けた経営改革について、資生堂の特別顧問であり日本取締役協会の副会長も務めておられる弦間明さん、グローバルな投資家の立場からダルトン・インベストメンツLLCの佐野順一郎日本代表兼経営委員、日本企業の成長のためのリスクマネーの担い手として多くの企業改革を手掛けてこられたニューホライズンキャピタルの安東泰志会長兼CEOの皆様にお集まりいただき、お話し合いをいただくことにしました。安東会長にはモデレーター役もお願いしております。よろしくお願いします。

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【第6回】DCF法

[西山先生のM&A基礎講座 [企業価値評価とコーポレートファイナンス]]
【第6回】DCF法

 西山 茂(早稲田大学大学院(ビジネススクール)教授 公認会計士)
 第5回では、投資プロジェクトの評価方法について学んできました。企業をいろいろな投資プロジェクトの集合体と考えると、投資プロジェクトの評価方法を応用することによって、企業価値の評価もできることになります。実際に第5回で学んできたNPVによく似た方法が、第1回で企業価値の評価方法の1つとして簡単に説明したインカムアプローチ、つまりDCF法として使われています。今回はこのDCF法について詳しく学んでいきます。 1.DCF法による企業価値・株主価値の算定  第1回でみてきたように、DCF法は、企業が事業を中心に今後生み出すであろうフリーキャッシュフローを予測し、それを現在時点の価値に割り引いて合計し、それを企業価値の評価額のベースとしていく方法です。  具体的には、企業が行なっている事業の価値を意味する事業価値と事業に関係しない資産の価値である非事業用資産の価値をそれぞれ区分して評価し、その2つを合計して企業価値を計算していきます。次に、その企業価値に権利を持っている2人の関係者、つまり銀行などの企業に資金を貸している債権者とその企業の株主のそれぞれの権利の強さに注目します。具体的には、企業が破たんをした場合には、株主より前に債権者に対して優先的に分配が行われることからわかるように、企業価値に対して優先権を持っているのは債権者です。したがって上記のように計算した企業価値から、優先権を持っている債権者の権利の価値である現時点で借りている借入金や社債の合計金額を差し引き、そのうえで残った金額を株主の権利の価値の理論値(理論的な時価総額)、つまり株主価値と考えていくのです。 図6-1 DCF法による企業価値・株主価値の計算のイメージ図     それでは、まず事業価値から考えていきましょう。第5回でみてきたNPV法は・・・ ■西山 茂(にしやま しげる) 早稲田大学政治経済学部卒業。米ペンシルバニア大学ウォートン校よりMBA取得。早稲田大学より博士号取得。監査法人ト-マツ等にて会計監査、株式公開コンサルティング、M&A支援、人材育成などの業務に従事。 2002 年から早稲田大学で教鞭をとり、2006年から現職。会計や財務といった数字をベースに理論と実務の両面から経営を考える授業やゼミを担当している。国内主要企業の監査役を歴任。会計・財務に関する著書多数。公認会計士。 ※詳しい経歴はこちら    

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第1回  株式譲渡契約の構造と論点(1)

[M&A基礎講座 「事業承継M&Aの法務」]
第1回 株式譲渡契約の構造と論点(1)

 高橋 聖(ソシアス総合法律事務所 パートナー 弁護士)
はじめに   近畿経済産業局のまとめによれば、後継者不足による中小企業の廃業が進み、関西だけでも2025年頃までに約118万人の雇用と約4兆円の域内総生産が失われる見込みであるとのことであり、ますますの社会の高齢化が進む中、中小企業の円滑な事業承継が喫緊の課題であることが改めて浮き彫りになりました。   本連載では、中小企業が長年にわたって築いてきた事業価値を損なうことなく、その技術・ノウハウや雇用を円滑に承継し、日本経済全体の発展に生かしていくための手法として注目される事業承継M&Aに焦点をあて、M&Aに携わる弁護士の立場から、その法務面でのポイントについてできる限り分かりやすく解説します。   本連載は、全6回の予定ですが、第1回及び第2回は、事業承継M&Aにおいて最も重要となる契約である株式譲渡契約について解説し、第3回はオーナー企業の売却にあたって問題となる法的論点、第4回は事業承継M&Aにおける株式にまつわる論点、第5回では事業承継M&Aの際に実施される法務デューディリジェンス、第6回では中小企業における株主の整理や集約について検討していきたいと思います。 事業承継M&Aの手法   いわゆるM&Aが行われる場合の手法としては様々なものが存在しますが、主な手法とその概要・特徴を以下の表に整理しています。なお、以下、本連載では、買手となる会社を「買手会社」、売却の対象となる会社を「対象会社」、対象会社の株主を「売手」と表記します。また、以下の表では、各手法について、比較対照の便宜上、典型的な例を念頭に各事項を記載しておりますので、実際には、会社や取引の規模・形態等によって必要となる手続等が異なることがある点はご留意ください。   事業承継M&Aは、①対象会社がオーナー企業であるため、株主(売手)の数が少なく、相対取引に適していること、②事業承継が目的であるため、売手であるオーナー株主はM&Aの実施によって対象会社の全株式を売り切って対価を取得することを望んでおり、その後に対象会社の株式を保有し続ける意向がないことが多いこと、③対象会社が非上場会社であることが多いこと等の特性を有しています。このような特性から、事業承継M&Aにおいては、手続的に負担が多い合併・株式交換、売手が対象会社の株主として残存したり、対価の支払先が売手とならない第三者割当増資や事業譲渡等ではなく、買手会社が売手から対象会社の株式を直接に買い取る、いわゆる相対での株式譲渡の手法が用いられることが圧倒的に多いのが実情です。 株式譲渡取引の進められ方   一般的な株式譲渡取引は、以下のチャートに記載するようなステップを踏んで進められることになります。   まず、売手・買手双方において… ■筆者略歴 高橋聖(たかはし・きよし) 1993年慶應義塾大学法学部法律学科卒業。株式会社リクルート勤務を経て、1999年より弁護士としてTMI総合法律事務所にて、主にM&A、国際取引、一般企業法務等を取り扱う。2015年にソシアス総合法律事務所を開設し、現在は、事業承継案件を中心に、多数の非上場会社売却案件に売手・買手のリーガルアドバイザーとして関与している。 University of Virginia School of LawにてLL.M.(法学修士号)取得。第一東京弁護士会所属弁護士・米国ニューヨーク州弁護士。    

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第4部 業種別

[「M&A基礎講座」 未上場企業買収後のPMIの実務 ~CFOの視点から~]
第4部 業種別 第7回 製造業におけるPMI

 熊谷 伸吾(株式会社エスネットワークス 経営支援第1事業本部 副本部長 兼 Esnetworks Asia Global Pte. Ltd. Director)
1.はじめに   これまでの6回は、上場企業、あるいはPE(ファンド)が未上場企業を買収した際に各業務や機能としてPMIを進めていくうえでの要諦を展開してきました。今回以降は2回にわたって視点を変え「製造業」「飲食業」といった業種別でのPMIのポイントについて記載したいと思います。   第7回となる今回は「製造業」にフォーカスして記載することにします。なお、近年の製造業は、生産拠点を海外に移す、といった施策も多く実施されていますので海外の工場管理に関する論点も今回補足として記載させていただくことにします。 2.製造業の特徴   読者の皆さんは「製造業」と聞くとどのような特徴をイメージするでしょうか?製造業とは、重工業、軽工業に限らず「食品」製造業等も含まれている定義になりますが、概ね当てはまる特徴としては以下のものがあります。  ①製造設備や生産技術を有している  ②原材料、部品および完成品在庫を有している  ③調達、製造、販売といった機能別組織が一般的  ④設備投資資金(新規、更新)がかかる  ⑤業種にもよるが、繁忙期と閑散期で生産調整をする場合がある   このような製造業の特徴を踏まえ、CFOはどのような点に留意してPMIを遂行する必要があるかを次章から述べていくことにします。 3.在庫の適正化(2.②、④と関連)   製造業において、原則として在庫の保有は不可避です(工場を保有しないいわゆる「ファブレス」であっても「製品(完成品)」在庫は発生します)。原材料や部品在庫がなければ製品が製造できず、完成品在庫がなければ顧客にタイムリーに製品を提供できないためです。そのため、各企業は生産効率化とともに、様々な在庫適正化の方法に取り組んできました。トヨタ自動車の「カンバン方式」は本稿で内容には触れませんが非常に有名な取組です。一般的に在庫適正化とは在庫削減に取り組まなければならないケースが多いため、以下では在庫削減に主にフォーカスした適正化方法について述べてまいります。 (1)在庫適正化(多くは「削減」)の目的   ではなぜ製造業では「在庫適正化(削減)」の取組が必要とされるのでしょうか?結論から先にお話ししますと、営業キャッシュフローの改善に大きな効果をもたらす一つの要素であるからです。   削減対象となる在庫には、もはや陳腐化して利用価値のない「不要在庫」と、まだ回転はしているもの最低限保有残高より多い「余分在庫」に分けられると思います。    「不要在庫」は短期的には、当該在庫を廃棄することで損失という膿出しを行うことになります。中期的には、陳腐化「不要在庫」を許容しない姿勢をとることで後述の「不要在庫」を発生させない仕組みを機能させることで在庫損失リスクを回避することにあります。    「余分在庫」の場合は、削減により必要運転資金が減少しますので、企業内に短期的にも中期的にも余裕資金を発生させる効果があります。 (2)在庫適正化(削減)の方法   在庫適正化(削減)にはいくつかの方法がありますが、買収した(未上場)企業にどの方法が最適かはCFO自身が会社を見てみるまで判断が難しいことは多いことでしょう。現場には、在庫の件だけをとっても、報告書で見るよりも非常に多くの情報があふれています。個々の在庫に内容がわかるタグがついているか、月末の実地棚卸でどのように在庫をカウントして帳票に記載しているか、在庫を取り間違えしやすい運用上のエラーがないか等、確認すべき事項は様々存在します。   では、以下では実際に在庫残高が膨らんでいた要因別に対処方法を記載したいと思います。 ①部材/商材別在庫残高が適切に管理できていない   未上場企業を買収した場合… [ 続きをご覧いただくには、下記よりログインして下さい ] ■株式会社エスネットワークス ■筆者略歴 熊谷伸吾(くまがい・しんご) 東京大学卒業後、株式会社エスネットワークスに入社。2017年より在シンガポール。シンガポールをハブとして、国内外のPMI(合併・買収後統合実務)、管理機能BPR(ビジネスプロセスの設計/改善)を主に実行。過去に税務(税理士資格は過去に返上)、人事労務、IPO業務の責任者も経験。会計財務だけでなく、幅広い分野でクライアントにアドバイスを実施。IFRS、デューデリジェンス、Valuation等の経験も豊富。日本公認会計士。 [関連記事] 【エスネットワークス】 M&A後に必要な現場力を常駐支援で提供して戦略実行を実現する(マール 2015年12月号)    

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すかいらーく―― 谷真社長がベインキャピタルと組んで歩んだ再上場までの1000日

[マールレポート ~企業ケーススタディ~]
すかいらーく―― 谷真社長がベインキャピタルと組んで歩んだ再上場までの1000日 有料記事です

8年ぶりの再上場   ファミリーレストラン最大手の「すかいらーく」が2014年10月9日、06年9月の上場廃止から8年1カ月ぶりに東京証券取引所第一部に再上場した。時価総額は2219億円で、外食企業としては日本マクドナルドホールディングスに次ぐポジションにつけて話題となった。また、同社はIFRS(国際会計基準)を採用しているため、IFRS適用会社の新規上場第1号企業となったことも注目された。   同社は、「ガスト」や「ジョナサン」のほか、中華「バーミヤン」、和食「夢庵」、イタリアン専門店「グラッチェガーデンズ」、本格和食「藍屋」、回転ずし「魚屋路(ととやみち)」などのレストラン事業を中心に、商業施設や駅構内での惣菜・スイーツ販売店「フロプレステージュ」を展開しており、店舗数は国内グループ2973店、海外を含めると3014店(14年12月31日現在)。13年12月期の業績(連結、IFRS基準)は、売上高3324億8400万円、営業利益225億6300万円、税引前(四半期)利益118億円、当期利益※70億8700万円、ROA(総資産利益率)2.32%、ROE(自己資本利益率)8.46%となっている。   ※親会社の所有者に帰属する当期(四半期)利益   このすかいらーくの実質的な前身となる食品スーパー「ことぶき食品」が設立されたのは、1962年4月である。70年7月に東京都府中市にファミリーレストラン「すかいらーく」第1号店を出店、その後の積極的な出店攻勢によって急成長した同社は、78年7月に店頭登録(現JASDAQ市場)、82年8月に東証2部に上場、84年6月には1部に指定され、日本を代表するファミリーレストランチェーンとなった。   しかし、景気低迷による中価格帯ファミリーレストランへのニーズ減退によって市場規模は97年の30兆円をピークに減少、さらに多様な業態の登場による競争激化もあって2000年代に入ると、不採算店が続出して業績が悪化していった。こうしたなかで、創業家である横川家は、野村プリンシパル・ファイナンス(以下NPF)を中心に、CVCキャピタルパートナーズ(以下CVC)などから出資を受けてMBOを実施、06年9月すかいらーくの非上場化を図った。その後、08年12月にNPFによる追加出資500億円が行われたが、それでもなかなか経営は成長軌道に乗らず、09年には創業以来の中核業態であった「すかいらーく」を完全閉店し、それに代わるブランドとして、低価格帯を狙ったガスト、中華専門のバーミヤン、和食専門の夢庵などを展開していった。その結果、08年12月期を底に業績は好転したものの、11年11月に負債込み2600億円で米国投資ファンドBain Capital Partners, LLC及びそのグループ(以下、総称して「ベインキャピタル」)によってセカンダリーバイアウトが行われることになった。(この間の詳しい経緯は本誌2012年2月号の「マールレポート」を参照)   ベインキャピタルは、全世界で総額700億ドルを越える運用資産を持つ国際的投資会社で、06年に東京拠点を開設、ジュピターショップチャンネル、ドミノピザ・ジャパン、ベルシステム24など7社に対して投資実績を持っている。すかいらーくについては、議決権ベースで97.8%の株式を保有していたが、今回の再上場に当たって一部株式を売却し、現在は約70%の筆頭株主となっている。

2017年1-10月のM&A件数と金額

2017.10.31現在 集計

  IN-IN IN-OUT OUT-IN 合計
件数 (件) 1,712 541 161 2,414
増加率 14.5% 5.0% -1.2% 11.1%
金額 (億円) 17,148

61,702

34,999 113,850
増加率 -42.5%

-24.6%

90.0% -12.5%

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