■イントラリンクスM&A情報リークスレポート2017|M&Aディール情報のリークが増加中?

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特集

辺見芳弘・インテグラル パートナーが語る「東ハト」「ヨウジヤマモト」再生の全プロセス
2017年9月号 275号(2017/08/15発売)

■「M&A基礎講座」 未上場企業買収後のPMIの実務 ~CFOの視点から~|株式会社エスネットワークス

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表明保証保険とその活用に際しての実務上の留意点

[M&A戦略と法務]
表明保証保険とその活用に際しての実務上の留意点 有料記事です

 十市 崇(TMI総合法律事務所 弁護士)
一 はじめに   M&Aに際して締結される、いわゆるM&A契約には、表明保証条項が規定されることが一般的であるが、表明保証条項に関連して、近時、表明保証保険が活用される場面が増加している。とりわけ、従前はいわゆるIn-Out型のクロスボーダーM&A取引における活用が中心であったが、最近ではいわゆるIn-In型の国内M&A取引においても、その活用が検討される事例が増加している。本稿においては、今後その活用がさらに増加することが予想される表明保証保険の概要とともに、その活用に際しての実務上の留意点について解説することとしたい。 二 表明保証保険の概要と活用場面   一般に、表明保証保険は「M&A契約に規定された表明保証の違反があった場合に、契約当事者が被ることになる経済的損失を保護することを目的とする保険」と定義することができるように思われる。表明保証保険には売主用の保険と買主用の保険の双方が存在すると言われているが、M&Aの実務上、活用されることが多いのは買主用の保険であることから、以下本稿においても買主用の保険の活用を前提とした解説を行う。買主用の表明保証保険にも、売主に対する請求を前提とする表明保証保険(いわゆるリコース型の表明保証保険)と売主に対する請求を原則として前提としない表明保証保険(いわゆるノンリコース型の表明保証保険)がある。   買主用の表明保証保険が活用される主な目的としては、売主の信用を補完して、補償の実効性を確保するという点が最も大きな点であろう。また、いわゆるオークション案件などにおいては、表明保証保険を活用することによって、競合する他の買主候補との比較において、売主に対して有利な条件提示が可能となるとのメリットもある。さらに、とりわけノンリコース型の表明保証保険では、売主との摩擦を回避することが可能になるとともに、リコース型の表明保証保険では、売主に対する補償請求の範囲を拡大できることなどもその効用として挙げることができる。   実務上、表明保証保険が活用される主な場面としては、(1)売主が投資ファンドで、いわゆるクリーン・エグジットを志向する場合、(2)売主が創業株主や経営陣などの個人で信用力が十分ではない場合、また(3)いわゆるオークション案件などで複数の買主候補が存在しており、買主が自らの補償請求権を確保しつつも、売主にとってより魅力的な提案を行うための手段として活用される場合などがあるが、上記の複数に該当するような場合、買主用の表明保証保険が活用されるとともに、最終的に活用にまでは至らなくとも、少なくとも、その活用が検討される事例も増加している。とりわけ(3)に関連して、買主が十分に競争優位な価格を提示できていない場合、また競争法上のクリアランスの取得に懸念がある場合など、自らが他の潜在的な買主候補と比較して、より有利な条件を提示する必要がある場合には、表明保証保険の活用の検討がより有益となる。また、ファンドが売主となるオークション案件などでは、売主が買主による表明保証保険の活用を入札の条件にするとともに、あらかじめ表明保証保険のアレンジを行うことがあり、このような場面では、買主が表明保証保険の活用を事実上、強制されることもある。この場合であっても、売主がアレンジした表明保証保険を必ず活用しなければならないわけではなく、自らが選定する保険会社を通じてアレンジする表明保証保険を活用することもできる場合が実務上、多いように思われるが、オークション案件では他の買主候補者の動向にも十分留意をすることが重要となろう。   なお、表明保証保険の活用を検討する場合であっても、一定規模以上のM&A案件は、そのリスクの高さから表明保証保険の対象とならず、また一定規模以下のM&A案件は、プロセスに要すコストから表明保証保険の活用が適しない場合もある。また四において検討をする通り、表明保証保険には種々の例外等も存在することから、その限界について十分に理解をするとともに、加入に際して支払う保険料に十分に見合う内容となっているか否かについて、慎重な検討を行うことが重要であろう。 三 M&Aのプロセスに際しての留意点

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No.178 学問と実務での知見を融合してIFRSを考える

[マールインタビュー]
No.178 学問と実務での知見を融合してIFRSを考える 有料記事です

 秋葉 賢一(早稲田大学 商学学術院 大学院会計研究科 教授)
[1]修正国際基準の採択 削除・修正は2点に絞る -- 国際会計基準(IFRS)のエンドースメント手続(自国基準へIFRSを取り込む手続)が進んでいます。先生もその作成作業に関与されています。 「金融庁の企業会計審議会が2013年6月に公表した『国際会計基準(IFRS)への対応のあり方に関する当面の方針』が出発点になっています。そこで、国際会計基準審議会(IASB)が公表したIFRSを一つ一つ吟味し、必要があれば一部の基準を削除または修正して採択するエンドースメントの仕組みが導入されることになったのです。具体的な検討作業は、会計基準の策定能力を有する企業会計基準委員会(ASBJ)が行うことになり、私もその作業部会のメンバーとなっています。1年近く議論し、14年7月に修正国際基準(国際会計基準と企業会計基準委員会による修正会計基準によって構成される会計基準)の公開草案を公表しています。15年中には、ASBJで承認された同基準が金融庁から日本で利用できる会計基準として認められると思われます」 -- 修正国際基準はどのような削除・修正をしたのですか。 「我が国で受け入れ可能かどうかを判断した結果、削除・修正は、どうしても受け入れらない二つに絞られました。一つは企業結合で生ずるのれんの処理の問題です。IFRSでは、のれんについては償却をせず、減損のみを行うとしています。しかし、のれんは、対価を払って購入した資産の一部です。会計的にいえば、投資原価の一部です。土地のように減価しない資産なら償却する必要はないのですが、通常、のれんは、時間とともにその価値が減少すると考えられるので、償却する必要がある資産と受け止められています。それで、この部分は削除・修正し、日本基準と同じようにすることにしたのです」

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【第83回】東芝は上場廃止をして経営を立て直すのが筋

[Webインタビュー]
【第83回】東芝は上場廃止をして経営を立て直すのが筋 ~半導体事業は産業革新機構‐KKR連合への売却が妥当

 田中 博文(ジェイ・キャピタル・パートナーズ 代表取締役)
17年3月期は最終赤字9500億円、初の債務超過 ―― 米原子力子会社ウエスチングハウス(WH)を巡って監査法人と意見が対立している東芝は5月15日、2017年3月期の連結業績に関して監査法人から決算の承認を得られないまま独自概算値として概要を公表しました。3月末にWHが米破産法適用を申請したことで、連結最終損益は前期の4600億円の赤字から9500億円の赤字に拡大し、自己資本は5400億円のマイナスとなって、決算期末では初の債務超過に陥りました。これについてはどのように捉えていますか。 「東京証券取引所の上場ルールでは、決算期末から45日以内に決算短信を公表することが適当とされていて、3月期決算の東芝では5月15日が決算発表のメドとなっていたわけです。WHの巨額損失を巡って監査法人のPwCあらたと意見が対立し、適正意見を得る見通しが立たないまま独自概算値として発表せざるを得なかったということですが、数字云々よりもこうした形で開示を行うこと自体が問題だと思います。監査法人が意見不表明のままの決算開示を認めていては上場の意義自体が揺らぎ、日本のマーケットのレーゾンデートルに関わります」 上場廃止が本筋 「これまで東芝については、この3月末に債務超過に陥る可能性が高いことを受けて、『東証2部に指定替え』との報道もでていましたが、個人的には特設注意銘柄に対する上場廃止が筋だろうと考えています。  特設注意市場銘柄というのは、有価証券報告書等の『虚偽記載』や不適正意見、上場契約違反等の上場廃止基準に抵触するおそれがあったものの、金融商品取引所の審査の結果、影響が重大とはいえないとして上場廃止に至らなかった銘柄のうち、内部管理体制等の改善が必要で、継続的に投資家に注意喚起するために取引所が指定する銘柄とされていまして、これはオリンパス事件の時に新たにできた制度です。東芝は15年9月15日に東証から『特設注意市場銘柄』に指定され、さらに16年12月19日に指定継続となっています。  また、当該指定から1年6カ月を経過した日(17年3月15日)以降に東芝から提出される内部管理体制確認書の内容を確認し、内部管理体制等について再度改善がなされなかったと認められた場合は、同社株式は上場廃止となります。もし市場第二部に指定替えになるとすれば、そのタイミングはシャープと同様、16年度の決算が確定する6月の株主総会後、有価証券報告書が提出されたタイミングということになるでしょうが、特設注意銘柄の指定解除か上場廃止の判断も同時期である可能性が高い。個人的にはどう考えても上場廃止であると見ています」 産業革新機構‐KKR連合への売却が最有力 ―― 東証の上場廃止基準(東証1部・2部)によると…  

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[座談会] M&Aの成否を分けるビジネス・デューデリジェンスの実務

[対談・座談会]
[座談会] M&Aの成否を分けるビジネス・デューデリジェンスの実務 有料記事です

【出席者】(五十音順)
 岡 俊子(岡&カンパニー 代表取締役)(司会)
 加藤 雅也(日本板硝子 執行役員 社長付戦略特命事項)
 金田 欧奈(ベーシック・キャピタル・マネジメント マネージング・ディレクター)

自己紹介 岡 「企業価値の向上を実現させるために、昨今、M&Aは、経営戦略上、極めて重要な経営ツールの一つになってきています。   そのM&A取引の中で実施されるビジネス・デューデリジェンス(DD)は、対象会社(ターゲット企業)の事業上のオポチュニティとリスクを見極めることを目的としていますから、このビジネスDDがしっかりとなされているかが、当該M&Aの成否を分けることになります。   そこで今回は、事業会社、プライベート・エクイティ(PE)ファンドで数多くのM&Aを経験してこられたお2人にお越しいただいて、『M&Aの成否を分けるビジネス・デューデリジェンスの実務』について議論をさせていただきます。まず、加藤さんから自己紹介をお願いします」 加藤 「日本板硝子の加藤です。私はどちらかというと工場勤務とか子会社出向など現場の方が長くて、M&Aに関連した業務に携わるようになったのは1999年頃からです。2006年には英国のガラスメーカーでグローバル展開していたピルキントン社買収(調達総額6160億円)のディールも担当しました。これまでに大小合わせて買収、売却を含めてM&Aは15件以上経験しておりますが、私はMBAでもなくM&Aの専門講義を受けたこともありません。実戦の中で起用したFA(フィナンシャルアドバイザー)とか各種コンサルタントの方々に教えていただきながら、現実のM&Aで起きる様々な問題を体験して自分なりに考え方を纏めてきました。その過程で色々な専門家の方とお知り合いになって、気が付いたらこんな座談会の場に呼んでいただいて、こんな偉そうなことをいう立場になったということです。今日はPEファンドの金田さんと、いつもお世話になっている岡さんとの議論を楽しみにしています」 金田 「ベーシック・キャピタル・マネジメントの金田と申します。今の仕事に就く前は、本日ご一緒させていただいています岡さんのもとでM&Aのコンサルタント業務に従事していました。その後、今から11年前にベーシック・キャピタル・マネジメントに参画し、PE業務をやらせていただいています。投資案件の発掘・提案から投資後の経営支援、その後の資本政策、出口戦略まで、いわゆるハンズオン型の投資を行っております。現在は投資先4社の取締役を兼務し、投資先企業を支援させていただいております」 岡 「改めまして、岡&カンパニーの岡です。1990年代後半からコンサルティングファームの中でM&A戦略の立案や、バリュエーションやビジネスDD、ポストM&Aのコンサルティング、これらを総称してM&Aコンサルティングと呼んでいますが、そういう仕事をやってきました。   今は、上場会社の社外取締役または社外監査役を務めるかたわら、個人事務所である岡&カンパニーで、M&Aや経営に関するコンサルティングを提供しています。また、大学の非常勤講師として、M&Aを実践的視点から教えています」 1.ビジネスDDの目的と準備 ビジネスDDの究極の4つの目的 岡 「さて、今回の座談会では、ビジネスDDに関して、大きく5つのポイントでお話をうかがっていきたいと考えています。   まず1つ目が、ビジネスDDを実施する目的をどのように設定しているか、その目的を達成するためにどういう準備が必要であると考えているか。2つ目が、ビジネスDDの建付け、つまり案件によってビジネスDDを行う、行わないの違いがあるのか、また外部のアドバイザーをどう起用しているか。3つ目が、トランザクションにおけるビジネスDDの進め方について。4番目が、ビジネスDDの結果をどう活用するか。そして最後に、ビジネスDD実施上の課題について、お話を頂戴できればと思います。   本題に入る前に、まず、ビジネスDDとは何かということをお話させていただいて、議論をスタートさせたいと思います。   一般にM&Aを行う際には、財務DD、法務DDについては、誰に言われるまでもなく、やるべきものと捉えられていて、買い手は、会計士、弁護士という、いわゆる“サムライ(士)業”の方たちに依頼していると思います。   他方、ビジネスDDというのはそれとは少し色合いが異なります。買い手は、まず対象会社を買収した後、どういう形で今後の成長につなげていくのかというストーリーを持つことが必要です。そのうえで、対象会社は一体どれぐらいこちらのニーズを満たしてくれるのか。満たさない部分があるとしたらどのような点なのか。その満たさない部分も抱き合わせで買収することに、合理性があるのかどうか、リスクはどこにあるのか、その大きさはどれくらいかといったことについて、事前に仮説をたてます。そして、それらを検証する場がビジネスDDということです。ですから、ビジネスDDは本来買い手が自分自身の手でやるべきだと、私は、外部の専門家としてビジネスDDのアドバイザーという立場であるにもかかわらず、そういう思いを持っています。我々の役割は、買い手自身が主体となって実施するビジネスDDを、第三者の立場でサポートするということです。   それでは、事業会社でM&Aに携わっていらっしゃる加藤さんから、ビジネスDDに当たって一番重要なポイントであるビジネスDDの目的をどのように設定しておられるのか、その目的を達成するためにビジネスDDの実施前にどこまでの準備をするのかという観点で、お話しいただけますか」 加藤 「岡さんがおっしゃるように、M&Aにおいては、買収目的を買い手自身が明確に自己認識しておくこと、そして十分に準備して買収プロセスに取り掛かることが極めて重要だと思います。DDの体系を説明するならば、ビジネスDDだけが独立して存在するわけではなく、財務、会計、税務、人事、労務、法務、あるいは環境というようなあらゆる角度からチェックを行うことが必要ですが、それらは全て買収目的に沿った戦略の実現性やリスクの想定、買収後の経営構想を準備するための情報として収集・分析されるわけです。その意味でDDを行う意義の中心に“ビジネスとしての関心”が位置するのは当然です。   ではビジネスDDの目的は何かということですが、今からお話しすることは私が全部できましたということではなくて、あの時こうしたらよかったとか、今やろうとしてもなかなか難しいけれどこうやるべきだという反省も含めて申し上げます。   私なりに考えてみまして、ビジネスDDの中心的な目的は4つあると思っています。1番目がバリュエーション、2番目はポストクロージング・マネージメント。これはシナジーとPMI(Post Merger Integration:M&A成立後の統合プロセス)という意味です。3番目がディール・ブレーカーとなるようなリスクの認識。4番目が買収ファイナンスを組成する目的で、デットもしくはエクイティのプロバイダーへの情報提供です。   まず1番目のバリュエーションとは、買収価格の適正なレベルを見積もるという本来目的に加えて、これ以上高くなったらそのディールから撤退するというマックスラインを自分自身で覚悟するために行います・・・

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事業承継対策におけるバイアウトファンドの活用機会

[視点]
事業承継対策におけるバイアウトファンドの活用機会 有料記事です

 木俣 貴光(三菱UFJリサーチ&コンサルティング コーポレートアドバイザリー部 部長)
  筆者は、大手金融グループのコンサルティング会社の一員として、M&Aのほか、中堅企業を中心とした事業承継対策の立案・実行も数多くサポートしている。その中で、経営資源に限りのある中堅企業が、単なる相続税対策ではなく、事業の成長や経営力強化に資する事業承継対策の一環として、バイアウトファンドを活用することの有用性を感じることも多い。そこで本稿では、バイアウトファンドがターゲットとするような優良中堅企業において行われている事業承継対策を取り上げながら、その中でバイアウトファンドを活用する機会について述べていきたい。 存在感を増すバイアウトファンド   団塊の世代が65歳に到達し、大量の退職が出ることで、労働力不足や職場における技術・ノウハウの継承に支障が出ることが懸念された「2012年問題」。それは、企業の経営層にもそのままあてはまる。一般に、オーナー経営者は、65歳~75歳の間に引退することが多い。そのため、2012年からの10年間は、多くのオーナー企業にとって事業承継問題が重大な経営課題となろう。現に、2012年以降、後継者不在を背景としたM&Aは増加しており、その傾向は少なくともあと5年は続くとみて間違いない。   そうした中、バイアウトファンドによる日本企業への投資も活発化している。バイアウトファンドの組成金額も拡大している(数千億円規模の資金が集まっている)一方で、近年は特に、中堅オーナー企業の事業承継の案件が増えつつある。今後、事業承継を背景とした非上場企業のM&A市場においても、バイアウトファンドの存在感はますます高まっていくものと思われる。 最もポピュラーな事業承継対策:持株会社制移行   中堅企業が最も多く採用している事業承継対策は、持株会社制移行である。この対策の主眼は、持株会社を設立し不動産等のグループ共有資産を集約化させることで、グループ経営の効率化を図ると同時に、次世代に株式を承継しやすくすることである。この手法では、通常オーナー家が保有する株式の換金化は基本的に行われない。そのため、オーナー一族内で株式が分散している場合は、その集約は実現できないままとなる。 そこで、オーナー一族内での株式の集約や換金化も志向する場合、エグジットをオーナー一族による買戻しを前提としてバイアウトファンドを活用することも考えられる。いわば、大政奉還型のバイアウトスキームである(図1)。ファンドとしては、レバレッジをかけることで一定の利回りを確保することができることから、スキームの提案時に、ファンドが出資したSPCが取得した金額と同額で再びオーナー一族に売却(エグジット)することをアピールするバイアウトファンドもある。   このスキームのメリットとしては、オーナー一族による株式の集約化や換金化のほか、ファンドの投資期間に経営管理体制の整備や新たな販路拡大など、ファンドの力を借りながら後継者への経営承継をスムーズに行うための準備を整えることができる点にある。

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第1部 「財務経理」

[「M&A基礎講座」 未上場企業買収後のPMIの実務 ~CFOの視点から~]
第1部 「財務経理」 第1回 PMIにおける「月次決算」の必要性

 横張 亮輔(株式会社エスネットワークス 経営支援第1事業本部 マネージャー)
1.はじめに  本連載では事業会社又はプライベート・エクィティ・ファンド(以下「ファンド」)が、内部管理体制が整備されていない未上場企業を買収した場合を想定し、管理部門におけるPMI(Post merger integration)の実務について全8回にわたって連載します。  企業は成長を目的にM&Aを実施しますが、その後の事業、社風、管理体制等の統合作業であるPMIがうまくいかずに、見込んでいたM&Aの効果を実現できないケースが多数存在します。特に、未上場企業を買収した場合は、管理部門の統合作業において、上場企業にはない様々な課題が出てきます。  本連載では、M&Aを成功させるためのPMIの実務について、管理部門の統合作業を担うCFOにとっての主要な課題及び改善策等という視点から解説します。    全8回のうち、1回から3回は「財務経理」、4回、5回は「経営企画」、6回は「IT」分野について解説します。そして、7回、8回は各々「製造業」、「飲食業」における業種別のトピックをテーマとする予定です。 2.PMIにおける「月次決算」の必要性  当たり前の話ですが日本ではすべての企業に対して決算を求めています。それは任意ではなく義務です。会社法により、株式会社は各事業年度に係る計算書類(貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、個別注記表)及びその附属明細書を作成する必要があります(会435条第2項、計規59条第1項)。さらに主に上場会社では、金融商品取引法により、決算開示が必要です。しかし、いずれの法律又は制度においても月次決算を行うことを定めているものはありません。例えば会社法では各事業年度、すなわち年に1回の年度決算ですし、金融商品取引法においては、四半期に1回の四半期決算です。したがって、月次決算を行うのはあくまで会社の任意によるものです。そして実際に月次決算を導入している未上場企業はそれほど多くはありません。  このような前提のもと、本稿ではPMIにおいてなぜ、そして、「敢えて」月次決算を導入する必要があるのか、管理体制が未整備な未上場企業を念頭に月次決算導入のポイント等を説明したいと思います。 3.PMIにおける適正な月次決算を導入する意義及び目的  そもそもPMIにおいてなぜ適正な月次決算を導入する必要があるのでしょうか。年度決算ではどうしていけないのでしょうか。  PMIでは買収した事業会社又はファンドから新しい経営陣が派遣され、既存の経営陣に代わって企業運営を担うケースが一般的と考えられます。新経営陣は適時に企業の経営実態を把握し、経営判断を下すことが求められますが、現代の企業を取り巻く環境は急激に変化しており、1ヶ月で状況が変わることも事業の内容によっては十分にありえます。また、新経営陣にとってはその環境における経営上の差配の「感覚」が従来の経営陣(オーナー)と比べてもまだ研ぎ澄まされているわけでもありません。そのため、年度決算では環境の変化に対応できず、経営判断を誤る又は判断が遅れる等の弊害が生じます。月次決算を行うことで、企業の現状を適時に把握することができ、様々な施策を打つ上で必要な情報を取得することができるわけです。  具体的には月次決算が行われ、決算数値を分析(予算実績差異分析、増減分析等)し、その結果を取締役会等の場で経営陣に報告する、という流れになります。経営陣はこの報告をもとに現状の経営実態がどうなっているのかを理解し、将来どのようなことが起きるのかを予測し対策を打ちます。すなわち、月次決算とは、経営判断の根幹であり、出発点と考えることができます。この出発点に誤りがあれば当然に経営判断も誤ってしまいます。適正な月次決算を行うということは、適切な経営判断を下すためにはなくてはならない基礎の部分であると整理できます。  それでは適正な月次決算は本当に経営実態を把握できる、そして経営判断に資する情報を提供してくれるものなのか、ということについて考察してみましょう。筆者はこのような信頼しうる経営情報の要件として、①比較可能性②適時性③客観性の3つを充足する必要があると考えています。  ①比較可能性:他の企業と比較ができること。また同一企業で期間比較ができること。  ②適時性:経営判断を行うタイミングにおいて「適切なタイミング」の情報が提供されていること。  ③客観性:情報が客観的であり、属人的でなく恣意性の介入余地がないこと。  適正な月次決算に当てはめてみると、この3つの要件を満たしていると整理できます。 適正な   =   比較可能性 月次   =   適時性 決算   =   客観性 ①比較可能性  いわゆる公正妥当な会計基準を適用していれば決算は適正であり、同じく公正妥当な会計基準をもとに決算を行っている他の企業と比較できます。また同一の事象は同じ会計処理を適用することになるため、同一の企業での期間比較もできます。そのため適正な月次決算は比較可能性があると言えます。 ②適時性  経営指標を取得できるのが年に1回であれば、適時に経営実態を把握できるとは言えません。どんなに適正な情報であっても、時間が経過すれば、経営環境が激変している昨今においてはその価値が早いタイミングで毀損していきます。この点、月次決算を行えば毎月企業の経営実態を適時に把握することができ、適時性があると言えます。 ③客観性  月次決算は、「数値」で報告されます。数値は一定の恣意性の介入を排除します。例えば全世界の人が「100」という数値を聞けば、同じように「100」を想像できます。これが「良い、悪い、大きい、小さい」等の指標では、人によって解釈の程度が異なり、共通認識を構築するのが難しくなります。月次決算は「数値」であるという点で客観性があると言えます。  3つの要件を検討してきましたが、適正な月次決算は比較可能性、適時性、客観性を備えた経営情報であり、経営判断に役立つと言えるため、PMIにおいて適正な月次決算を導入する必要があると筆者は考えています。  それでは次に・・・ [ 続きをご覧いただくには、下記よりログインして下さい ] ■株式会社エスネットワークス ■筆者略歴 横張亮輔(よこばり・りょうすけ) 慶應義塾大学卒業後、株式会社エスネットワークスに入社。IPO準備企業での経理実務支援、未上場会社での経理BPR 業務、上場企業での開示資料の作成支援、ベンチャー企業でのIPO支援業務等に従事。その他、バリエーション業務、デューデリジェンス業務、フィナンシャル・アドバイザー業務を多数経験。直近ではファンド投資先のPMI支援を主に担当。公認会計士。 [関連記事] 【エスネットワークス】 M&A後に必要な現場力を常駐支援で提供して戦略実行を実現する(マール 2015年12月号)    

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【Acuris(アキュリス)】 グローバル金融メディア「Mergermarket(マージャーマーケット)」がグループ名を変更

[M&Aの現場から]
【Acuris(アキュリス)】 グローバル金融メディア「Mergermarket(マージャーマーケット)」がグループ名を変更

 水田 麻衣(Mergermarket部門アジアパシフィック・日本エディター)
 畑 規恵(Dealreporter部門東京支局長)

  『Mergermarket(マージャーマーケット)』など、企業の金融ニュースと分析を専門とするグローバルメディア企業である“Mergermarket Group”は、2017年7月グループ名を「Acuris (アキュリス)」に変更し、新たなスタートを切った。   Acurisとは――「Acumen 洞察力、見識」、「Curation 収集、整理」、「Insight 洞察、物事の本質を見抜くこと」の合成語。   同グループは、1999年にロンドンで戦略的M&A情報サイトとして設立されたのが始まり。英国のFinancial Newsにいた30代の営業マンとシニア・エディター及びシュローダー出身の投資銀行マンの3人がロンドンのドット・コム専門のプライベート・エクイティ・ファンド(New Media Spark)他数人の投資家から800万ドル(約9億円)の出資を受けてMBOで立ち上げた。   その後、2006年8月、世界最大の出版社でフィナンシャル・タイムズのオーナーである英国のピアソンplcがマージャーマーケットを約2億ドルで買収。8年後の14年1月にピアソンは6億2400万ドルでロンドンのプライベート・エクイティ・ファンドであるBCパートナーズに当時のマージャーマーケットの営業利益の15倍で売却した。なおBCパートナーズは、17年6月にシンガポールのソブリン・ウェルス・ファンドであるGICに30%の持株を売却している。   AcurisはM&Aに積極的で、ここ数年を見ても14年6月にPerfect Information (ロンドン)、15年9月 AVCJ (Asian Venture Capital Journal :香港)、17年5月にはTIM Group(ロンドン)を買収して事業の拡大を図ってきた。『Mergermarket』が必ずしもグループの代名詞でなくなりつつあることから 新しいブランドでグループの再構築を図ことになった。   「Acurisは、ロンドン、ニューヨーク、香港の3つの本部をはじめ支局など世界中に拠点を張り巡らせています。日本に支局を設立したのは05年9月です。同時に香港、ムンバイ、上海支局が設立されました。創業当初はヨーロッパが中心でしたが、02年に米国に進出し、軌道に乗ってきたところで、いよいよアジアに展開をということで日本への進出を決断しました」と語るのは、畑規恵・Dealreporter部門東京支局長。   畑氏は・・・ [関連記事] 【マージャーマーケット】 世界65の拠点、約500人の記者がM&Aを中心としたインテリジェンスを提供(2015年4月号)  

2017年1-7月のM&A件数と金額

2017.07.31現在 集計

  IN-IN IN-OUT OUT-IN 合計
件数 (件) 1,139 378 107 1,624
増加率 9.9% 3.8% -9.3% 7.0%
金額 (億円) 9,890

45,042

9,581 64,514
増加率 -60.2%

-23.6%

-46.7% -36.6%

 *2016年1-12月の日本企業のM&A動向は、こちら

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