マール最新号

特集

日本にドローン革命を起こす
2017年10月号 276号(2017/09/15発売)

■「M&A基礎講座」 未上場企業買収後のPMIの実務 ~CFOの視点から~|株式会社エスネットワークス

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アウトバウンドM&Aにおける初期的検討事項

[M&A戦略と法務]
アウトバウンドM&Aにおける初期的検討事項 ~PMIを見据えた買収検討と法律事務所との効率的な協働~ 有料記事です

 後藤 一光(TMI総合法律事務所 パートナー弁護士)
第1. はじめに   日本企業による海外企業の買収(いわゆるアウトバウンドM&A)は、近年増加の一途を辿っている(注1)。近年は、これまでアウトバウンドM&Aの当事者となることが少なかった内需型産業や中小規模の企業が当事者となるケースも増加している。   残念ながら、アウトバウンドM&Aの中には、言語や文化、法制度等の違いから、買収プロセスや買収後の経営が必ずしもうまくいかないケースが珍しくないように見受けられる。しかしこれらの事態は、案件の初期段階での検討を適切に行うことにより避けられる場合が多い。   そこで本稿では、事業会社がアウトバウンドM&Aを実行する際に初期段階から検討すべきポイントを、特に法律事務所との効果的な協働体制と買収後の統合(PMI)の観点から整理することを試みたい。 第2. 効果的な法律事務所の起用法 1. 起用のタイミング   アウトバウンドM&Aの場合、できるだけ案件の検討を始める段階から法律事務所を関与させることが望ましい。日本国内のM&Aであれば、スキームもある程度固まり、デューディリジェンス(DD)を開始する段階から法律事務所を起用する場合も散見されるが、アウトバウンドM&Aではそのようなアレンジは避けた方が良い。アウトバウンドM&Aにおいては、国内のM&Aでは通常考慮する必要がない事項も検討する必要があり、検討が遅れると、後からスケジュールや買収スキームを大幅に変更する必要に迫られ、結果的により時間とコストがかかってしまうことがある。 2. 初期段階で検討すべき事項   案件の初期段階では、特に(1)案件の実現可能性、(2)スケジューリング及び(3)買収スキームについて、リーガルの観点からのアドバイスが必須となるケースが多く、また、(4)その他の国や案件ごとの特殊事情への配慮も必要となる。 (1) 案件の実現可能性   魅力的な買収候補先が見つかったとしても、その案件が思い描いたとおりに実現可能とは限らない。   障害となる例の最たるものが外資規制である。業種によって、そもそも外国資本が株主となることが全面的に禁止される場合、出資割合が制限されている場合、投資金額が制限されている場合、逆に一定金額以上の資本投下が義務付けられる場合等、様々なパターンがある(注2)。   また、見落としがちなものとして、土地の所有制限がある。特に新興国では、株式の取得制限とは別に、外資による土地の所有が制限されている場合が多い(注3)。買収対象会社の株式の取得が問題ない場合であっても、買収の結果、当該買収対象会社による土地所有が禁止又は制限される場合もあるので、留意が必要である。この場合、事前に土地を処分する、適切な使用権に切り替える等の対応が必要となるため、可能な限り検討段階で把握しておく必要がある。土地の所有制限は地方政府・自治体レベルでの制限が課されている場合もあり、自社で調査することは困難である場合が多いと思われる。   さらに、資金決済・外国為替管理に関する法令によって、海外との資金決済が制限されている場合もあるため、この点についても注意を要する。このような制限がある場合、買収後に親会社に対する配当が制約される可能性があるほか、株式取得の対価や支払方法等にも影響が生じる場合がある。例えば、インドでは、非居住者がインド企業の株式を取得する場合、売買価格を会計士が算定した公正価格以上の金額とすることが義務付けられており、逆に非居住者がインド居住者に株式を売却する場合には公正価格以下とする必要がある。このため、対価自体に影響が生じる上、会計士のバリュエーションを経るための時間と費用も余計にかかることになる。さらに、インドでは、非居住者に対する株式譲渡の対価の分割払いが一定の割合を超える場合や、義務違反に基づく補償請求が一定の割合を超える場合、当局の事前承認が必要とされているため、株式譲渡契約の作成においても注意が必要である。   このほか、米国のいわゆるエクソン・フロリオ修正条項に基づくCFIUS(対米外国投資委員会)の審査のように、国家や国土の安全保障を確保するための特別な規制の対象となる業種もあり、この点も留意する必要がある。 (2) スケジューリング   スケジュールに影響を与える大きな要因として、(ア)各国の競争法に基づく企業結合審査と、(イ)株式の取得等に際して必要となる当局への届出等の手続がある。   (ア)各国の競争法に基づく企業結合審査は、買収対象会社の所在国のほか、事業を展開しているその他の国でも届出を行う必要が生じ得る。届出の要否や必要となる国又は地域は、買収対象会社から詳細な売上高等の数字の開示を受けなければ確定できない場合が多いが、スケジュールを検討するに際して、ある程度の当たりを付けておくことは必要である。また、そもそも承認が下りない可能性があるというレベルで問題となる国がないかも初期段階から検討しておく必要がある。   特にインドや東南アジア等では、(イ)の当局への届出についても意識しておく必要がある。株式の取得に際して当局への届出や投資許可の取得又は変更等が必須となる国があり、その手続には意外と時間がかかることも多い。全く同じような内容の届出であっても、当局の担当者によって、指示される内容が全く異なる場合もある。 (3) 買収スキーム   買収スキームについても、買収対象会社の設立地国の法制度に応じて適切な方法を選択する必要がある。   外資規制により単独で100%株主となることができない場合には、共同で事業を運営する現地の合弁パートナーと組む必要がある(注4)。   外資規制が厳しい、又は完全に禁止されている業種については、単純な名義貸しに近いようなスキームや、中国におけるいわゆるVIEスキーム(注5)のように、事実上この規制を回避するためのスキームが広く用いられている場合もあるが、これらのスキームを採用する場合のリスクと対策については、案件の初期段階からよく理解し、検討を行う必要がある。新興国においては規制が突然変更され、それまで行われていたスキームが利用できなくなる可能性も否定できないため、最新の法令事情について、案件の都度確認する必要がある。   このほか、日本では当然に用いられている手法が存在しない国や、日本にはない制度が一般的に利用されている国もあるため、注意を要する。   例えば、英国と英国法の影響を受けた法制度を有する国々の一部では・・・

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【第6回】 キャッシュフロー分析・セグメント分析

[円谷先生のM&A基礎講座 [財務分析入門]]
【第6回】 キャッシュフロー分析・セグメント分析

 円谷 昭一(一橋大学大学院商学研究科 准教授)
 本連載では、「財務分析入門」と題して7回にわたって連載します。前回までは損益計算書と貸借対照表の項目を使った分析を説明してきました。第6回はもう1つの重要な計算書であるキャッシュフロー計算書の分析方法を説明します。また、多角化企業の事業別の分析方法についても紹介します。 キャッシュフロー計算書  キャッシュ(cash)とはそもそも何でしょうか。「現金及び現金同等物」と訳されます。文字通り、「現金」と「現金同等物」の合計額です。スズキの有価証券報告書(2016年3月期)には以下のような計算表が掲載されています。    貸借対照表の流動資産に計上されている「現金及び預金」「有価証券」を元に「現金及び現金同等物(キャッシュ残高)」が計算されていますが、いくつかの調整が加わるために、貸借対照表に計上されている「現金及び預金」とキャッシュ残高の金額は必ずしも一致しません。このキャッシュの一定期間での変動(flow)がキャッシュフローであり、その変動の理由と金額を説明しているのがキャッシュフロー計算書です。  キャッシュフロー計算書は「西山先生のM&A基礎講座[決算書の見方]」で詳しく説明されており、あらためて述べる必要はありませんが、キャッシュフロー計算書ではキャッシュフローを3つに分類して記載しています。「営業活動によるキャッシュフロー(営業CF)」「投資活動によるキャッシュフロー(投資CF)」「財務活動によるキャッシュフロー(財務CF)」です。営業CFは、営業活動が拡大して企業の現金収入が増えれば増加します。一方で、原材料高騰などで現金支出が増えれば減少します。つまり、営業活動を通じて企業に入ってきた、または、出て行ったキャッシュが合計され、営業CFの金額として記載されます。投資CFは、投資活動のためにキャッシュを支出したら減少し、投資回収(工場売却など)によって手元にキャッシュが入ってきた場合には増加します。この合計額が投資CFの金額として記載されます。最後の財務CFは、財務活動によるキャッシュフローです。銀行から資金を借り入れた場合には手元にあるキャッシュが増加します。一方で、借金を返済した場合には手元のキャッシュは減少します。また、株主に配当を実施した場合にはキャッシュは減少します。このように借入れや配当といった財務活動によって増減したキャッシュの合計額が財務CFの金額となります。スズキの2016年3月期のキャッシュフロー計算書(連結)の抜粋が以下です(抜粋のため、合計に不一致が生じています)。    スズキは2016年3月期に営業活動を通じて2,941億円のキャッシュを手に入れています。投資活動では有形固定資産の取得に1,626億円を投じており、その他を含めた合計で2,424億円の支出となっています。財務活動では今期に自己株式の取得を4,605億円ほど実施したこともあり、5,204億円の支出となっています。この結果、今期の現金及び現金同等物の増減はマイナス4,822億円となり、期首残高9,323億円と合計して、期末残高は4,501億円となっています。 キャッシュフロー計算書の分析視点  では、どこに着目してキャッシュフロー計算書を分析していけばよいでしょうか。ここでは…   ■筆者プロフィール■   円谷 昭一(つむらや・しょういち) 一橋大学大学院 商学研究科 准教授。2001年一橋大学商学部卒業。06年一橋大学大学院商学研究科博士課程修了、博士(商学)取得。埼玉大学経済学部准教授を経て、11年より現 職。経済産業省「持続的成長への競争力とインセンティブ-企業と投資家の望ましい関係構築を考える-」委員、「企業会計とディスクロージャーの合理化に向 けた調査研究」委員などを歴任。日本IR協議会客員研究員。主な論文に「機関投資家ファンダメンタルズと株主総会投票行動の関連性(月刊資本市場2016 年9月)」、「IFRSの任意適用が経営者業績予想の精度に与える影響(會計2016年6月)」など。 ※詳しい経歴はこちら      

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【第86回】【キーストーン・パートナース】3号ファンド(300億円)の投資ターゲット

[Webインタビュー]
【第86回】【キーストーン・パートナース】3号ファンド(300億円)の投資ターゲット

 堤 智章(代表取締役)
PEファンドへの出資に積極的な金融機関 ―― 「リバイバルスポンサーファンド参号投資事業有限責任組合(以下3号ファンド)」を総額300億円で最終クローズしましたね。 「当初の計画では2017年4月をめどに考えていたのですが、3月に募集金額が満額になったので予定より早くクローズしました」 ―― 1号、2号ファンドはそれぞれどのくらいの規模でした? 「1号は2010年92億円で、2号は13年154億円です」 ―― LPは金融機関が主体ですか。 「半分が企業年金基金、半分が生命保険、地方銀行などの金融機関です」 ―― 最近、設立されるPEファンドの募集規模が大きくなっていますが、1号ファンド設立の当時と比べて募集環境が変わってきているということは言えますか。 「たしかに変わってきています。3号のファンドが順調に集まった理由は、1つはゼロ金利ですね。企業年金基金は運用利回りが低迷する国内株式や低金利が続く国内債券への投資の代替手段として、安定的に相応のインカムゲインが見込めることからPEファンドへの出資に前向きになっています。それに加えて、金融庁が地銀に対して収益性を重視する指導を行っているということもあって、一昨年ぐらいから地銀に関してもPEに対する出資に対して積極的な姿勢が見られます」 インバウンド増加を背景としたホテル業界に注目 ―― 2号ファンドでは化粧品の訪問販売大手エイボン・プロダクツなどへの投資がありましたが、3号ファンドについてはどのような投資戦略を持っていますか。 「我々は必ずマクロ経済の流れのなかで、投資期間中に成長する業界を選んで投資対象を決めるようにしてきました。  2号ファンドで化粧品会社への投資を行ったのも、2016年の化粧品輸出額が日本で初めて輸入を超えたというマクロの変化が背景にあります。中国を中心としたアジアに向けた日本製の化粧品輸出が拡大しているのです。ということは・・・  

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[座談会]日本のガバナンス改革の進展と戦略的企業買収の行方――王子製紙事件から10年、提案型TOBはどうなるのか

[対談・座談会]
[座談会]日本のガバナンス改革の進展と戦略的企業買収の行方――王子製紙事件から10年、提案型TOBはどうなるのか 有料記事です

 田中 亘(東京大学 教授)
 ニコラス・ベネシュ(公益社団法人役員育成機構 代表理事、在日米国商工会議所成長戦略タスクフォース 委員長)
 川村 尚永(経済産業省 経済産業政策局 産業組織課長)
 司会・編集 川端 久雄(編集委員、日本記者クラブ会員)

<はじめに> ―― 日本のコーポレートガバナンス改革はこの1、2年で大きく進展しました。2015年が元年と言われ、今年はその2年目に当たります。ガバナンス改革(企業統治改革)の狙いは、日本企業の稼ぐ力の回復、日本経済の再生にありましたが、一連の改革により企業買収やM&A全般を取り巻く環境も変わっています。   一方、M&Aに目を転じると、2015年は世界的にM&Aがブームとなりました。製薬業界やビール業界で巨大企業が誕生しています。日本も海外M&A(IN-OUT)が過去最高となり、トータルの金額も過去2番目の額になりました。日本も一見、活況を呈しているように見えますが、欧米と比較すると質量ともまだ低調です。敵対的TOBに代表される提案型TOBがもっと活発になれば、日本のM&Aはさらなる飛躍を見せるのではないでしょうか。   折しも、2016年は王子製紙(現王子ホールディングス)が北越製紙(現北越紀州製紙)に対し敵対的TOBを試みたものの、失敗に終わってからちょうど10年目になります。   今だったら、王子のような敵対的TOBは成立するのか。ガバナンス改革により、日本の企業買収はどのような影響を受けるのか。さらに提案型TOBを促進するため、日本の買収法制などを見直す必要があるのか。   本日は、第1部で企業買収の観点からガバナンス改革の経緯、狙い、到達点を整理するとともに、今後のガバナンス改革の方向性についてもお話をしていただきます。続いて第2部で日本のM&Aの現状、敵対的TOBの意義、王子・北越事件とその後、提案型TOBの可能性、買収法制について日本が進むべき道などについてご議論をしていただきます。   田中亘東京大学教授は会社法と企業買収法制についての第一人者です。ニコラス・ベネシュ公益社団法人役員育成機構代表理事は、日本のコーポレートガバナンス・コード策定の影の功労者と言われています。川村尚永課長は日本の産業組織の改善などの担当課長で、金融庁「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」のメンバーなども務めておられます。

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資本コスト再考

[視点]
資本コスト再考 ~買収における割引率についての再整理~ 有料記事です

 鈴木 一功(早稲田大学大学院経営管理研究科(早稲田大学ビジネススクール)教授)
  企業買収において、企業価値評価は今や不可欠の実務となった。しかしながら、実際に実務家から相談を受ける中で、資本コストとは何か、という概念が、正しく理解されていないのではないかという懸念を持つことが度々ある。そこで本稿では、そもそも資本コストとはどのような数値なのか、そして、どのような理屈に基づいて、その計算をすべきなのかについて、再度整理しておく。本誌の読者の多くには、釈迦に説法かもしれないが、再確認ということで、ご一読頂ければ幸いである。   まずは2つほど、事例を挙げよう。   1つ目の事例は、某多国籍企業(日本企業)の元CFOの方との会話で気付いたことである。海外事業の評価(EVA的なもの)の際に用いている資本コスト(筆者の意図としては、WACC)に、どのような数値を用いておられるのかをお尋ねしたら、全世界一律に、日本における資本コストを使っておられると即答された。その理由としては、日本において世界中の資金調達を一括して行っているので、資本コストは当然日本のものとなる、ということだった。   2つ目の事例は、M&Aの現場で散見される以下のような考え方である。買収の際に、ディスカウント・キャッシュフロー法(DCF法)を用いて売手企業の企業価値評価をする際に、買手の資本コスト(および買手のベータ値)を用いて、キャッシュフローを割り引いて企業価値を求めるという考え方である。その理由として、買手が調達した資金が、売手の資産の獲得に活用されると考えられることが述べられる。

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第103回 買収先経営者の成長志向と付き合い方の設計(上)

[ポストM&A戦略]
第103回 買収先経営者の成長志向と付き合い方の設計(上) 有料記事です

 竹田 年朗(マーサー ジャパン グローバルM&Aコンサルティング パートナー)
  株主から見た経営者とはどのようなものかというと、期待役割の内容、大きさ、複雑性などから「求める人材の要件」を定め、適材を探して任命し、あるいは新たに雇い入れる対象である。買収先経営者の場合でも、単に買収時にはそこまでする時間がないために現任者のリテンション策を講じることが多いだけであって、考え方は同じである。つまり、今後、より適した人材と交代させる可能性が常にある。   一方、買収先経営者にしてみると、リテインされれば、通常は自分がこれまで経営してきた事業を継続して経営し、伸長することが期待されるため、よほど嫌でない限りは「当面=1年ないし2年程度」続投し、その間にその先のことを考えるのは、そう悪い話ではない。個人のキャリアの段階や志向性はさまざまで、買い手とうまくやれるかどうかも、実際にやってみないことにはわからないからである。   このように、買収先経営者個人と会社の関係は、一旦は設定せざるを得ないが、その後は相互に見直しが入るものである。この中で、経営者の適材適所と適材経営者のリテンションがどのようにうまくデザインできるのか、経営者が持つ成長志向や成長願望にも触れながら、解説したい。 経営者市場と経営者の成長志向   日本企業が行う海外買収の対象は、大きく2つのパターンに分けられる。まず、すでに企業の体を成している場合である。創業者色が消えて久しく、かなりの大企業となっている場合を含む。創業者がまだ実態的に、あるいは象徴的に企業を牽引している場合でも、組織によって事業を運営しており、創業者を助ける経営者が育成・内部登用され、あるいは外部から採用されている。本稿では、こちらのパターンについて述べる。   もう一つは、企業というよりは創業者の個人商店が大きくなったものである。重要な部分に革新性や工夫がちりばめられ、高いレベルの事業運営や業績達成ができている場合もあるが、ほとんどの場合で事業規模はさほど大きくない。しっかりとした組織体制と経営の仕組みなしには、通常は規模が維持できないからである。こちらのパターンについては、次回連載で述べる。   経営者市場が有効に機能する、つまり市場により需給が充足され、報酬等が適切に条件設定されるのは、前者の大企業中心の企業社会の方である。経営者を目指す人材は、内部昇格に必要に応じて転職を組み合わせ、キャリアの階段を上がっていく。具体的には、より大きな役割と責任・権限を獲得し、これに伴ってより高い認知と、より大きな報酬機会を追求する。   経営者市場が機能している国、あるいは経営者市場の概念に基づいた経営幹部人材マネジメントを行う企業(成長途上国でもそのような企業は多い)では、大会社のシニアマネジメントは職責が大きく、それ相応に報酬も高く、その水準は日本の通念を上回る(本連載第81回「グローバル企業の人材マネジメント」(下)参照)。そして、それが優秀な人材を経営者という職業に惹き付け、本人はキャリア・アップ、つまり、同一企業内ではより高いポジションへの異動を、またはより大きな事業・企業への移動を目指す動機づけを得る。   買収先経営者とて同じ経営者であり、原理的には成長機会というものに惹き付けられる。ただし、個人の置かれた状況について場合分けをきちんと行う必要がある。 経営者の志向性と経営者への期待   経営者は上昇志向が強い、などと一言で言ったところで、通常は自分がうまくやれる可能性(「勝ち目」)を考えながら、その上昇志向なるものの具体的内容を、自分のプライドが満たされる地点と現実との間を行ったり来たりしながら適切に定めることになる。つまり生身の人間で、生活もあるから、あまりドン・キホーテのようなマネはしないのが普通である。そのため、今は目の前の機会を取るしかないが、より良い機会が出てきたら乗り換えるのに躊躇しない、という判断が(本人はそんなことは絶対に言わないが)頭をもたげるのである、他方で、本人がその乗り換えを考えるのをしばらく抑止しようというのが、買い手が付与するリテンションプランの狙いである。   買い手の期待値は、本人が買収前から経営してきた事業を引き続き牽引し、一段と飛躍させることである。それは一体どんな内容の飛躍で、どのくらいの飛躍なのか、というのは、買収ストーリーやシナジーの想定、現状改善の機会、そして買収価格(支払ったプレミアム)で決まる。決まりさえすれば、経営者から見たやりがい・面白さや達成難度、そして期待報酬との見合いもはっきりしてくる。   成長機会の点からも報酬・処遇の点からも、本人にとってまたとないチャンスに思える場合は、あまり問題がない。しかし、大変さや割に合わない感覚が先に立ち、本人が到底心からやりたいとは思えない場合も考えられるので、以下の①②③でもう少し説明する。

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ワールドホールディングス

[データファイル [注目企業のM&A戦略を追う]]
ワールドホールディングス 時代の波を捉え事業領域を拡大し、総合力の向上を目指す ~M&Aも活用し、安定した事業成長へ~

1.はじめに  福岡市に本社を置き「人材・教育ビジネス」、「不動産ビジネス」、「情報通信ビジネス」の3事業をコアビジネスとしているワールドホールディングス(以下、ワールドHD。東証1部上場)の業績が好調だ(図表1、図表2参照)。2016年12月期まで7期連続の増収、6期連続の増益を達成。2011年12月期に378億9200万円だった売上高は5年後の2016年12月期には2.5倍の943億3400万円となっている。 (図表1)ワールドHDの事業別概要 (図表2)ワールドHDの業績推移  ワールドHDの前身である旧ワールドインテックは、1993年に人材ビジネス事業会社として設立された。2005年にジャスダック証券取引所に上場し、その後、M&Aにより情報通信ビジネスに参入。2010年には不動産ビジネスに進出し、事業の多角化を進めてきた。M&Aを活用して人材とノウハウの「種」を買い、育てることで、グループ全体の成長スピードを加速させてきたワールドHDは、2014年には持株会社体制に移行し、3つのコアビジネスのさらなる成長と新たな事業領域の確立を掲げる。その一環として、2017年2月には農業公園の運営管理を手がけるファーム(愛媛県西条市)を買収し、同社を中心に新しいセグメントの確立に挑戦している。  最近では2016年3月に東証2部に市場変更、そのわずか3カ月後の6月には東証1部に指定替えとなり注目を集めた。ジャスダック上場を契機にM&Aも活用しつつ周辺事業への進出や営業エリア獲得により事業規模を拡大させてきた同社のこれまでの歩みを追う(図表3)。 (図表3)ワールドHDの主なM&A 2.沿革~M&Aにより事業領域を拡大 (1)人材ビジネス会社としてのワールドインテック設立  ワールドHDの前身であるワールドインテックは、伊井田栄吉会長兼社長が1993年に福岡県北九州市で設立した。  もともと、伊井田会長兼社長は1981年にみくに産業(現・ミクニ。ワールドHD子会社)という不動産会社を設立し経営していたが・・・  

2017年1-8月のM&A件数と金額

2017.08.31現在 集計

  IN-IN IN-OUT OUT-IN 合計
件数 (件) 1,338 442 128 1,908
増加率 11.3% 9.4% -3.0% 9.8%
金額 (億円) 11,692

55,580

10,274 77,547
増加率 -54.1%

-9.7%

-43.0% -26.2%

 *2016年1-12月の日本企業のM&A動向は、こちら

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